統監府

統監府（とうかんふ）

統監府は、1905年（明治38年）の第二次日韓協約に基づき、大日本帝国が当時の大韓帝国の外交権を掌握するために漢城（現在のソウル特別市）に設置した官庁です。韓国統監府とも呼ばれていました。

設置と変遷

統監府は、明治38年勅令第240号「韓国ニ統監府及理事庁ヲ置クノ件」によって設置されました。その根拠法は、後に統監府及理事庁官制（明治38年12月21日勅令第267号）となります。初代韓国統監には伊藤博文が任命され、明治39年（1906年）2月1日に事務を開始しました。正式名称は単に「統監」であり、「韓国」という名称は付きません。

1910年（明治43年）8月29日の韓国併合に伴い、朝鮮総督府が設置されましたが、統監府およびその所属官署は当分の間存続し、朝鮮総督の職務は統監が代行することになりました。その後、9月30日に朝鮮総督府官制が制定され、統監府は大韓帝国政府の組織と統合を経て、朝鮮総督府に改組されました。

組織

明治40年（1907年）時点での統監府の内部部局は以下の通りです。

総務部
秘書課、人事課、文書課、会計課、地方課
農商工務部
商工課、農林課、水産課、鉱務課
警務部
警務課、保安課、衛生課
外務部
韓国課、外国課
法制審査会

また、所属官庁として、通信官署、鉄道管理局、法務院、財政監査庁、観測所などが置かれていました。

地方機関としては、京城、仁川、釜山、元山、鎮南浦、木浦、馬山に理事庁が設置されました。

歴代統監

初代：伊藤博文（1905年12月20日 - 1909年6月14日）
第2代：曾禰荒助（1909年6月14日 - 1910年5月30日）
第3代：寺内正毅（1910年5月30日 - 1910年9月30日）

統監の権限

韓国統監は、韓国に駐留する軍（韓国守備軍）の司令官に対する指揮権を持っていました。そのため、文官である伊藤博文が就任し指揮権を持つことには、現地司令官の長谷川好道や元老の山縣有朋が難色を示しました。しかし、明治39年（1906年）1月14日に明治天皇が参謀総長の大山巖、陸軍大臣の寺内正毅に勅語を与え、伊藤の権限を認めました。これにより、大日本帝国憲法下で唯一、文官が軍の指揮権を持つ職となりました。伊藤博文、曾禰荒助と文官の統監が2代続いた後は、朝鮮総督も含めて武官が就任しています。

また、韓国統監は、統監府令を発し、1年以下の禁錮または百円以下の罰金を科すことができました。

副統監

曾禰荒助：1907年9月21日 - 1909年6月14日
山縣伊三郎：1910年5月30日 - 1910年9月30日（1910年10月1日より統監府副統監の改組後の同等職責となる、初代朝鮮総督府政務総監に着任）

理事庁

統監府の地方機関として、韓国内7か所に「理事廳」が設置され、理事官および副理事官が配置されました。理事官は、従来の領事業務に加え、以下の権限を有していました。

1. 統監の指揮監督を受け、第二次日韓協約および法令に基づき、理事官が執行すべき事務を管掌する。
2. 安寧秩序を維持するために緊急の必要があると認める場合、統監の命令を待つ余裕がないときは、当該地方駐在帝国軍隊の司令官に出兵を要請することができる。
3. 韓国の施政事務で、第二次日韓協約に基づく義務の履行のために緊急を要し、統監の命令を待つ余裕がないと認めるときは、直ちに韓国の当該地方官憲に指示し、これを執行させた後、統監に報告しなければならない。
4. 理事庁令を発し、罰金10円以内、拘留または科料の罰則を科すことができる。

参考文献

浅野豊美『帝国日本の植民地法制―法域統合と帝国秩序』（名古屋大学出版会、2008年、ISBN 4-815-80585-7）
『官報』

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