統計的プロセス制御

統計的プロセス制御(SPC)とは



統計的プロセス制御(Statistical Process Control, SPC)は、製造工程を視覚的に監視し、品質に影響を与える可能性のある変化を早期に検出するための手法です。SPCは、管理図などの統計ツールを用いて、製造プロセスにおける変動を分析し、管理することで製品の品質を維持・向上させることを目的としています。このアプローチは、製造された製品のばらつきが、いくつかの工程パラメータに起因するという考えに基づいています。したがって、これらのパラメータを制御することで、最終製品の品質を効果的に制御できると考えられています。

SPCの利点



従来の製品管理(Product Control)方式では、全工程が完了した製品を全数検査し、基準に満たないものを排除していました。これに対し、SPCは製造工程の途中で少数のサンプルを採取し、データを収集・分析するため、より効率的です。このため、SPCは費用対効果が高く、製造業において広く採用されています。

歴史



SPCの概念は、ウォルター・A・シューハートによって提唱されました。彼は、管理図の基礎となる統計的制御の概念を築き上げました。シューハートは、実際の製造現場で収集したデータが、純粋な数学的理論における正規分布に従わないことを発見しました。製造業のデータは、自然界のデータとは異なる特性を示し、全ての製造工程にはばらつきが存在すること、しかし、そのばらつきの原因は常に同じではないという結論に至りました。この発見が、SPCの理論的な基礎となっています。

その後、エドワーズ・デミングが第二次世界大戦中にアメリカの工業生産効率化にSPCを応用し、大きな成果を上げました。デミングは戦後、日本にもSPCの概念を紹介し、日本の品質管理の発展に大きく貢献しました。

SPCの概要



SPCは、統計的なツールを用いて、製造ラインの効率を測定し、不良品を生み出す可能性のある偏差を予測します。前提として、全ての製造工程には変動が存在するという考えがあります。たとえ正常に機能している場合でも、製造工程の特性は設計とは微妙に異なっており、そのような偏差を統計的に分析することで、工程を制御します。

例えば、ある朝食用シリアルの梱包ラインにおいて、各箱に500グラムのシリアルが詰められるように設計されていたとします。しかし、実際には、一部の箱には500グラムより少し多く、また別の箱には少し少なく詰められていることがよくあります。この変動は確率分布に従い、平均値は500グラムとなります。しかし、機械の摩耗などの変化によって、この確率分布が変化することがあります。例えば、摩耗が進み、箱に詰めるシリアルの量が全体的に増加した場合、その変化に気づかなければ、シリアルが増量された製品が市場に出回ることになり、コストが増大してしまいます。このような場合、コスト増大は実質的な値下げにつながるか、または再加工や廃棄によってコストが増大します。

そこで、製造ラインごとに責任を持つ品質管理者やチームが配置され、工程の変動を監視し、原因を特定し、問題を解決します。SPCは、どのタイミングで何を行うべきかを示すだけでなく、何もしない方が良い場合も示します。例えば、体重を一定に保つために週に一度体重を測る人がいるとします。SPCを知らない人は、体重が増えるたびにダイエットを始め、体重が減るたびにたくさん食べるでしょう。しかし、これはかえって体重変動を大きくする可能性があります。SPCの手法を用いれば、体重変動を小さく、緩やかにコントロールすることができます。

ソフトウェア工学への応用



1989年、カーネギーメロン大学ソフトウェア工学研究所(SEI)は、SPCの概念を製造業だけでなく、ソフトウェア工学プロセスにも導入しました。この概念は、現在でもCMMIのレベル4とレベル5に組み込まれています。しかし、ソフトウェア工学のような非反復的で知識集約型のプロセスにSPCを適用することについては、いまだに議論の余地があります。

参考文献



Deming, W E (1975) On probability as a basis for action, The American Statistician, 29(4), pp146-152
Deming, W E (1982) Out of the Crisis: Quality, Productivity and Competitive Position ISBN 0-521-30553-5
Oakland, J (2002) Statistical Process Control ISBN 0-7506-5766-9
Shewhart, W A (1931) Economic Control of Quality of Manufactured Product ISBN 0-87389-076-0
Shewhart, W A (1939) Statistical Method from the Viewpoint of Quality Control ISBN 0-486-65232-7
Wheeler, D J (2000) Normality and the Process-Behaviour Chart ISBN 0-945320-56-6
Wheeler, D J & Chambers, D S (1992) Understanding Statistical Process Control ISBN 0-945320-13-2
Wheeler, Donald J. (1999). Understanding Variation: The Key to Managing Chaos - 2nd Edition. SPC Press, Inc. ISBN 0-945320-53-1.

関連項目



工程制御
工程能力
品質保証
品質管理
標本調査
日本経営学会

脚注



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外部リンク



Statistical Process Control
Two Types of SPC

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