統計部守衛殺人事件

統計部守衛殺人事件

1953年7月25日、アメリカ統治下の沖縄・那覇市で、統計部の守衛が殺害されるという痛ましい事件が発生しました。

事件の概要

事件が発生したのは、琉球政府統計部と食糧会社の倉庫が立ち並ぶ地域でした。午前2時頃、異様な物音に気づいた食糧会社の管理人が現場に駆けつけると、統計部の守衛が倒れていました。守衛は至近距離から銃で撃たれており、弾丸は体を貫通していました。

現場周辺を調べると、窓ガラスが外され、金庫をこじ開けようとした形跡が見つかりました。事件直後、守衛は意識がありましたが、入院先の病院で容態が急変し、7月30日に亡くなりました。

事件発生前の7月19日には、那覇市にあった米軍第21郵便部隊から拳銃が盗まれる事件が起きており、琉球警察は、この拳銃が犯行に使用された可能性が高いと推測しました。

8月1日、コザ警察署（現在の沖縄警察署）の管轄内で、拳銃を使用した恐喝事件が発生し、聾唖者の男が逮捕されました。押収された拳銃を調べたところ、米軍郵便部隊から盗まれたものと一致しました。警察が男を統計部の犯行現場に連れて行ったところ、男は手振りや身振りで犯行を「自供」しました。その後、共犯者も逮捕されました。

裁判

1955年1月17日、中央巡回裁判所は、2人の被告人に対して無期懲役の判決を言い渡しました。

事件の背景

この事件は、戦後の混乱期における沖縄の治安状況を浮き彫りにするものでした。米軍基地からの盗難事件が頻発し、それらが凶悪犯罪に使われるという状況は、当時の沖縄社会が抱えていた問題を象徴していると言えるでしょう。また、聾唖者に対する捜査方法や裁判のあり方についても、議論の余地を残す事件であったと考えられます。

この事件は、沖縄の戦後史を語る上で、決して忘れてはならない出来事の一つです。

参考文献

* 比嘉清哲『沖縄警察50年の流れ 犯罪実話物語』1997年

もう一度検索