琉球警察

琉球警察：戦後沖縄の治安維持を担った組織

1972年の沖縄本土復帰まで、アメリカ施政権下の沖縄で活動した琉球警察。沖縄戦で壊滅した県警察部の後継として、ゼロから構築されたその歴史と組織、そして抱えていた課題について、詳細に見ていきましょう。

誕生の背景：沖縄戦後の混乱と米軍統治

沖縄戦によって沖縄県警察部は壊滅しました。戦後、米軍の統治下で新たな警察機構の構築が急務となりました。1952年、琉球政府の発足とともに琉球警察が誕生します。しかし、琉球列島米国民政府（USCAR）の影響を受け、当初予定されていた公安委員会制度は導入されず、警察行政官庁として「警察局」が設置されました。公安委員会が設置されたのは1969年と、かなり後のことです。

琉球警察の組織と業務

琉球警察は、本土の国家地方警察に相当する組織として位置づけられていました。そのため、発足当初は「地区警察署」「警察隊長」といった表現が使われていました。米国の警察制度も参考に導入され、本土の警察にはない消防業務も兼務していました（戦前の日本警察は消防を兼務していたため、その名残とも言えます）。

経費は主に琉球政府が負担しましたが、USCARも約4分の1を補助していました。組織は警察局、警察本部、そして各警察署から構成されていました。1971年時点では、12の警察署と1956人の職員（警察官1860人、その他職員96人）を擁する大規模な組織となっていました。

1952年時点での組織構成は警察局、警察本部、警務課、教養訓練課（警察学校）、刑事課、消防課、交通課、海上保安課、出入国管理課でした。本土復帰間近の1972年時点では、公安委員会、警察本部（警務部、刑事部、警備部、交通部、警察学校、各警察署）と、より複雑化、専門化された組織となっていました。

主な警察署としては、那覇警察署、普天間警察署（当初は首里警察署）、糸満警察署、与那原警察署（当初は玉城警察署、後に知念警察署）、コザ警察署（当初は胡差警察署）、嘉手納警察署、具志川警察署、石川警察署、名護警察署（当初は田井等警察署）、渡久地警察署（当初は本部警察署）、宮古警察署、八重山警察署などがありました。

制服と装備

群島政府時代には独自の制服がありましたが、琉球政府発足後は日本の警察官とほぼ同様の制服が採用されました。ただし、アメリカ合衆国の警察を参考に、左ポケットの上に一連番号が付いた「警察官章」を付けていた点が異なります。拳銃の携帯は緊急時や所属長の許可が必要でした。パトカーなどは米軍払い下げの車両を使用していましたが、沖縄の道路事情や修理の困難さから、本土復帰後は日本車へと順次移行していきました。

海上保安業務

1971年9月に琉球海上保安庁が発足するまでは、琉球警察が海上保安業務も担っていました。尖閣諸島周辺の警備の重要性が増す中、日本政府の援助により巡視船（救難艇）が建造され、積極的に領域警備を実施していました。

代表的な船舶として、「おきなわ」（日本のやはぎ型巡視船と同型）、「ちとせ」（日本のひだか型巡視船と同型）などがありました。本土復帰後、「ちとせ」は海上保安庁に編入され「のばる」と改名されました。

琉球警察軍構想

朝鮮戦争勃発を機に、米軍は沖縄の治安維持のため「琉球警察軍」の創設を検討しました。これは警察業務の他に、関税、移民業務なども担う準軍事組織でした。しかし、財政問題や統一政府の不在などを理由に、計画は頓挫しました。

犯罪率と主な事件

復帰前の沖縄の犯罪率は非常に高く、特に凶悪犯罪は東京の3倍以上もあったと言われています。復帰後も全国平均より高い水準が続き、昭和時代には常にワーストテンにランクインしていました。

まとめ

琉球警察は、複雑な歴史的背景の中で誕生し、沖縄の治安維持に大きな役割を果たしました。米軍の影響、本土との違い、そして独自の課題を抱えながら、本土復帰まで活動を続けた琉球警察の歴史は、沖縄の歴史を語る上で欠かせないものです。この記述が、琉球警察についての理解を深める一助となれば幸いです。

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