緊急防除

緊急防除とは

緊急防除とは、植物に重大な被害をもたらす恐れのある有害動植物（病害虫など）が、新たに日本国内に侵入した場合や、国内の一部にすでに存在している場合に、その蔓延を防止するために緊急的に実施される防除措置のことです。この措置は、植物防疫法第17条から第21条に定められており、対象となる有害動植物の発生状況に応じて、迅速かつ集中的な対応が求められます。

緊急防除の内容

緊急防除では、以下の様な措置が実施されます。

防除区域の指定: 防除を行うべき区域と期間を明確に定めます。
寄主植物の制限: 感染した植物だけでなく、感染の恐れのある植物についても、栽培の制限や禁止、譲渡や移動の制限を行います。
消毒・除去・廃棄: 感染した植物や、感染の可能性がある植物に対して、消毒、除去、廃棄などの措置を行います。

これらの措置を組み合わせることで、有害動植物の拡散を効果的に抑制し、農作物などへの被害を最小限に抑えることを目指します。

緊急防除の具体例

ウメ輪紋ウイルス（プラムポックスウイルス）

ウメ輪紋ウイルスは、モモやスモモなどの農作物に甚大な被害を与えるウイルスです。日本では2009年4月に東京都青梅市で初めて発生が確認されました。

これを受けて、2010年2月20日から東京都青梅市、日の出町全域、あきる野市、八王子市、奥多摩町の一部地域が防除区域に指定され、感染した植物や感染の恐れがある植物の抜根・焼却、持ち出し禁止措置を含む緊急防除が実施されました。その結果、吉野梅郷の梅は全て伐採されることとなりました。当初、防除期間は2015年3月31日までとされましたが、2021年3月31日まで延長されました。また、防除区域は後に神奈川県、愛知県、岐阜県、大阪府、兵庫県の一部地域にまで拡大されました（後に一部地域は除外）。

ジャガイモシロシストセンチュウ

ジャガイモシロシストセンチュウは、ジャガイモなどのナス科植物に寄生し、枯死させる害虫です。日本では2015年8月に北海道網走市内のほ場で初めて確認されました。

これに対し、2016年10月23日から2020年3月31日までの期間で、北海道網走市の一部を防除区域に指定し、ナス科植物の作付け禁止、移動制限、廃棄などの措置による緊急防除が実施されました。

ミカンコミバエ種群

ミカンコミバエ種群は、柑橘類に大きな被害を与える害虫で、日本では1919年に沖縄本島で初めて確認されました。その後、南西諸島や小笠原諸島に広がり、長らく寄主植物の国内移動が禁止されていました。1968年から根絶事業が開始され、1986年には根絶が確認されました。

しかし、2015年9月に鹿児島県奄美大島南部などで再びミカンコミバエ種群が確認されたため、誘殺用のテックス板の散布などの防除が行われました。しかし、10月以降も多数確認されたため、同年12月13日からは、鹿児島県奄美市、大島郡宇検村、瀬戸内町、龍郷町、大和村を防除区域として緊急防除が開始され、寄主植物の国内移動の禁止、ミカンコミバエ種群が付着している恐れのある植物の廃棄措置が取られました。当初、防除期間は2017年3月31日までとされましたが、奄美大島での対策の結果、根絶が確認されたため、2016年7月14日に緊急防除は解除されました。

まとめ

緊急防除は、有害な動植物による被害を最小限に抑えるために、迅速かつ徹底した対応が求められます。これらの事例からわかるように、緊急防除は地域経済や生態系に大きな影響を与えることもあります。そのため、発生を未然に防ぐための予防措置や、早期発見が非常に重要となります。

参考資料

緊急防除について - 農林水産省植物防疫所

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