総体革命

創価学会が1960年代以降に取り組んだとされる、社会全体への影響力拡大を目的とした一連の戦略を指す言葉が「総体革命」である。これは、武力を用いず、社会の様々な重要分野に組織のメンバーを配置することで、情報収集能力を高め、最終的に権力の中枢を掌握しようとする一種の「無血革命」路線と解釈されている。

背景と提唱

この概念は、創価学会自身が公式に発表したスローガンや計画ではない。むしろ、学会の動向を外部から分析したり、元学会員による証言に基づいたりして提唱された見解である。特に、新潮文庫などのメディアや、創価学会に対する批判的な立場を取る乙骨正生氏のような人物が使用し、広まった経緯があるため、「造語である」との指摘も存在する。しかし、創価学会が現実に行ったとされる様々な活動を説明する概念として、広く知られている。

多分野への戦略的浸透

総体革命の中核にあるのは、司法、行政、教育、経済、マスコミ、外交といった社会の基盤となる各領域に、計画的に学会員を送り込むという戦略である。これは、公明党が政権に参画した場合に、その基盤を組織的に支える体制を築くことや、より広範に社会全体に対する創価学会の支配力を確立することを目的としていたとされる。

具体的な浸透の様相

警察

警察組織への浸透もその一環として語られてきた。特に、警部や警部補といった現場の指揮官職を学会員で占めるという構想があったとされる。1995年には、民社党の元委員長であった大内啓伍氏が、警察関係者から警視庁内に約4000人の創価学会員の警察官が存在すると聞いたと証言するなど、具体的な数字を伴う形で議論されることもあった。

自衛隊

自衛隊内部にも学会員が多いという見方も存在する。2014年頃には、陸・海・空各幕僚監部の1佐クラスをはじめとする幹部自衛官の中に、創価大学出身者が増加しているという証言がなされており、組織の重要ポストへの学会員の進出が進んでいる可能性が指摘された。

法曹・キャリア官僚

創価学会の学生部内には「法学委員会」という組織が設置され、法曹界（判事、検事、弁護士）や国家公務員のキャリア官僚、外交官、公認会計士といった、高い専門性を持つ人材を計画的に育成・輩出する特別プロジェクトが推進された。この取り組みにより、多数の創価学会員がこれらの分野で活躍するようになり、中には信田昌男氏のように地方検察庁のトップである検事正にまで昇進した会員も現れている。

政治

総体革命の最も顕著な成果の一つと見なされているのが、政治分野への影響力拡大である。公明党が自民党との間で連立政権を長期にわたって維持し、特に国土交通大臣ポストを継続的に担ってきた事実は、その象徴と言える。創価学会の組織票がなければ当選が難しいとされる自民党国会議員が100名以上に上ると指摘されるようになり、国会運営において創価学会が持つ影響力は非常に強力なものとなった。さらに、創価学会との強固なパイプが政治力の源泉と見なされていた菅義偉氏が内閣総理大臣に就任し、行政府に対しても間接的に強い影響力を行使できる時代を迎えたことは、「総体革命」路線が事実上「成就」した状況にあると形容される根拠ともなっている。

結論

総体革命は、創価学会が社会の多岐にわたる分野に組織として浸透し、影響力を拡大しようとしたとされる非公式な戦略概念である。特に政治分野においては、公明党との連携や組織票を背景に、国政の中枢に対し無視できないほどの力を持つに至った現状は、この「総体革命」という言葉が示す方向性が現実のものとなったことを示唆している。

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