総谷トンネル

総谷トンネル（そうだにトンネル）は、かつて近畿日本鉄道大阪線の旧線、東青山駅と榊原温泉口駅の間に存在した鉄道トンネルです。

概要と歴史

このトンネルは、近鉄大阪線の阿保（現：青山町）駅と佐田（現：榊原温泉口）駅の間が開業した1930年（昭和5年）12月20日より供用が開始されました。当初、近鉄大阪線のこの区間は単線として運用されており、総谷トンネルも単線のトンネルでした。

1970年代に入ると、近鉄大阪線の輸送需要は増加の一途をたどり、これに対応するため路線全体の複線化計画が検討され始めます。特に、複雑な地形が続く青山峠越えの区間は輸送上のボトルネックとなっており、その解消は急務でした。総谷トンネルもこの複線化計画の対象区間に含まれていました。

しかし、そうした状況下にあった1971年（昭和46年）10月25日、この総谷トンネル内で、大阪上本町行きの特急列車（4両編成）と、賢島発大阪難波・京都行きの特急列車（8両編成、うち京都行きは4両）が正面衝突するという、極めて痛ましい事故が発生しました。単線区間における列車の行き違いミスや通信不備などが重なったことが原因とされています。この事故により、乗客・乗員合わせて25名が亡くなり、227名もの負軽傷者を出すという、近鉄の歴史上でも類を見ない甚大な被害をもたらす大惨事となりました（詳細は「近鉄大阪線列車衝突事故」を参照）。

この重大な事故は、近鉄大阪線の安全性に対する信頼を大きく揺るがしました。事故を契機に、近鉄は路線の安全性向上、特に単線区間の解消を急ぐこととなります。当初計画されていた大阪線の全線複線化は、この事故を受けて予定を大幅に前倒しする形で推進されることとなりました。

そして1975年（昭和50年）11月22日、近鉄大阪線の全線複線化が完了すると同時に、西青山駅、東青山駅、榊原温泉口駅間を結ぶ新たなルートが開通しました。この新線には、より大型で複線に対応した新青山トンネルや新総谷トンネルなどが建設されました。これにより、旧線の総谷トンネルを含む区間は鉄道としての役目を終え、廃止されました。

現在の状況

鉄道施設としての役割を終えた総谷トンネルですが、その一部は現在もその姿をとどめています。特に大阪側の入り口は、東青山駅から徒歩およそ10分程度の距離にある「東青山四季のさと」に隣接する形で残存しており、当時の歴史を静かに物語っています。

周辺には、かつて近鉄大阪線の主要駅であった東青山駅や榊原温泉口駅があり、旧線跡地は一部が遊歩道として整備されるなど、廃線後の風景の変化を見ることができます。

周辺の駅

東青山駅
榊原温泉口駅

関連項目

新青山トンネル
生駒トンネル
新向谷トンネル
近鉄大阪線列車衝突事故

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