線路使用料

線路使用料とは

線路使用料（せんろしようりょう）は、鉄道路線を利用する運送事業者が、線路を保有する事業者に対して支払う料金です。この料金は、特に他の事業者の車両を使って自社の列車を運行する直通運転のための車両使用料とは異なる性質を持っています。

線路使用料の背景

他の交通手段、例えば道路や航空では、インフラを所有する者とそのインフラを利用する者が異なることが一般的ですが、鉄道の世界では、長い間列車を運行する事業者が自ら線路を保有し保守することが一般的でした。しかし、インフラにかかる設備投資が固定費となり、経営に過度の負担をもたらすことから、線路の保有と運行を別の事業者が行う「上下分離方式」が進展してきました。

この場合、列車を運行する事業者は、線路を保有する事業者に対し利用実績に基づいた使用料を支払います。この制度によって、運行事業者はインフラにかかる費用を変動費化でき、経営の効率化が図れる可能性が生まれました。特にヨーロッパでは、鉄道事業に新たに参入する企業が使用料を支払うことで、自由に事業を行うことが可能となる「オープンアクセス方式」が普及しています。

日本における線路使用料

日本では、鉄道事業者は第一種、第二種、第三種に分けられ、特に第二種事業者は第一種または第三種から線路を借りて運営する形態がほとんどです。したがって、第二種事業者は第一種及び第三種に対して線路使用料を支払うことになります。ただし、独立行政法人鉄道建設・運輸施設整備支援機構が保有する鉄道路線は、第三種と見なされず、運行する鉄道事業者は第一種を営んでいると扱われます。

JR貨物の場合

日本貨物[[鉄道]]（JR貨物）は、JR旅客鉄道各社や並行在来線事業者の線路を使用して自社の貨物列車を運行しています。このため、線路使用料が発生し、特にアボイダブルコストの考え方に基づいて計算が行われます。これは、もし貨物列車が運行されなかった場合の保守経費に基づき、実際の運行によって増加した保守経費を元に求められ、JR貨物が支払うことになる仕組みです。この方式は国鉄分割民営化に伴い、経営基盤を支えるために低く設定されています。

新幹線の線路使用料

国鉄分割民営化によって、東海道・山陽・東北・上越の4新幹線は「新幹線鉄道保有機構」が所有することになり、各JR会社は使用料を支払って運行を行っていました。この際、過去の国鉄債務の負担が引き継がれており、それに基づいて各社へ対して策定された線路使用料は、経営の負担に影響を与えました。

整備新幹線に関しても、建設した機構が所有権を持ち、JR各社は「貸付料」として使用料を支払っています。この貸付料は、特定期間内の収益を基に算出され、各新幹線の区間により異なります。

海外の動向

欧州連合（EU）では、「指令91/440」に基づき、鉄道事業者に対し上下分離とオープンアクセスを義務付けています。この指令により、各国は鉄道のインフラ管理を適切に行うための専門経営組織を設立しています。これにより、鉄道の運行会社はインフラ管理者に使用料を支払う形式が一般化しています。

一方、北米では、旅客鉄道事業は衰退し、貨物鉄道が主流となっています。アメリカとカナダの旅客鉄道事業者は、貨物鉄道会社から線路を借りて運行していますが、法律により貸出しが義務付けられており、直接的な線路使用料の概念は薄いのが現状です。

結論

線路使用料は、多様な背景や制度の下で運用されており、国によってその形態や計算方法は異なるものの、効率的な運営を意識した制度設計がなされています。このように鉄道時代の進展により、逐次変わる環境に対応した柔軟な経営が期待されるでしょう。

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