緞帳

緞帳（どんちょう）について

緞帳とは、特に舞台に設置された幕のことを指し、観客席から舞台を隠すという重要な役割を担っています。一般に略して「どん」とも呼ばれ、その存在は芝居の始まりや終わりを示すサインともなっています。演出上の都合から、存在しない場合もありますが、クラシック音楽のコンサートやポピュラー音楽のパフォーマンスでは、演出効果を高めるために使用されることが一般的です。

緞帳は各劇場やホールにおいて、形や模様、デザインが多岐にわたります。開場から開演までの間、また終演後に観客の目に留まりやすく、そのため劇場のイメージを左右する重要な要素です。特にプロセニアム形式の舞台には必ず設置されていますが、サイズの小さな劇場では設置されていないこともあります。

緞帳の歴史

現在一般的なデザインの緞帳は、1880年に東京の新富座に設置されたものが起源とされています。この劇場のオープン時にアメリカ元大統領ユリシーズ・グラントが訪れることで、彼から贈られた幕が緞帳の形で使用されたことに端を発しています。緞帳は比較的太い糸で作られているため、1平方メートルあたりの重さは平均で約4kgに達し、大劇場の緞帳は1トン近くにもなることがあります。その重量のため、緞帳を吊るための紐やチェーンが経年劣化することがあり、それが原因で緞帳が落下してしまう事故も発生しています。このような事故では、巻き込まれた人が怪我をすることも少なくありません。

緞帳の種類

緞帳にはいくつかの種類があり、それぞれ特徴を持っています。

昇降緞帳

一般的に「緞帳」と言った場合には、上下に昇降する緞帳を指します。多目的ホールなどでは、唯一の役割を果たすため単に昇降緞帳と呼ばれます。

絞り緞帳

絞り緞帳は、裏面に取り付けたワイヤーを用いて、全体に細かいひだを作ったものです。閉じた状態ではカーテンのような見た目になります。クラシックバレエなどで見られますが、メンテナンスが難しいため、設置はあまり普及していません。

引割り緞帳

中央から割れる形状の緞帳で、「割どん」とも呼ばれています。特に歌舞伎などの伝統的な舞台で使用されます。

引き幕

上手または下手側に引いて開閉する幕で、日本では茶・黒・緑の縦縞で表現され、特に歌舞伎の幕として一般的です。

オペラカーテン

引き割り方式で、幕が中央から割れて両サイドが上に開く構造を持ちます。開閉方法にはさまざまなスタイルがあり、国によって異なります。特に日本では上手の幕が前方となり、下手の幕が奥に位置しますが、西洋では逆の場合も見受けられます。

操作・管理

緞帳の操作方法は劇場によって異なりますが、電動式のものが一般的で、舞台袖にある操作盤から開閉が行われます。そのため、安全性を考慮し、通常は専門の係員が管理し、操作を行うシステムとなっています。

緞帳に関する派生語

「緞帳」という言葉は直接的には使われませんが、舞台動作に関連する表現として「幕が開く（上がる）」や、「幕を引く（降ろす）」といった言い回しが定着しています。これらは、緞帳の動きから派生した表現と考えられています。舞台芸術の重要性を物語る緞帳は、演出の要素として欠かせない存在です。

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