幕
「幕（まく）」とは、劇場での演技、映画の上映、あるいは式典や祭り、広告、装飾など、様々な目的で用いられる、主に吊り下げる形式の布製品全般を指す言葉です。カーテンや帳（とばり）の仲間と言えます。
劇場の装置として重要な役割を果たすのが「舞台幕」です。多種多様なものが存在しますが、中でも最も常設的で重要なのは「緞帳（どんちょう）」で、大きな布地で舞台と観客席の間を区切ります。歌舞伎などで使われる、舞台と客席を仕切る引き戸式の幕は「定式幕（じょうしきまく）」と呼ばれます。舞台の袖や東西に用いられる「袖幕」「東西幕」や、舞台上部に横に張られる「水引幕」などもあります。水引幕は、相撲の土俵上の屋根や、飲食店、屋台などの間口に商品名などを表示するために使われることもあります。また、場面転換のために舞台を一時的に暗く覆う「暗転幕」もあります。
舞台芸術においては、演劇の場面区分を表す単位としても「幕」という言葉が使われます。「部」「幕」「場」のように区分が細かくなり、文楽や歌舞伎の「段」にあたります。この用法から転じて、物事の段階や区切りを表現する言葉としても広く用いられます。「開幕」「幕が上がる」「終幕」「幕を下ろす」「幕切れ」といった表現はその例です。「黒幕」や「幕の内弁当」といった言葉も、舞台に由来すると言われています。
映画館で映像を映し出すために使われる白い布は「銀幕（ぎんまく）」と呼ばれ、「映写幕」とも言います。また、光を遮断する目的で使われるのが「暗幕（あんまく）」です。スライド映写やフィルム現像など、暗い環境が必要な場面で役立ちます。一般的には黒い布が多く使われ、カーテンが代用されることもありますが、赤外線を完全に遮断することはできません。
式典や祭礼、野外での催しなどで、特定の空間を囲うように張られる幕を「幔幕（まんまく）」と言います。特に、野外で陣地を設営する際に使われるものは「陣幕」と呼ばれます。
複数の色の布を一定間隔で交互につないで作られた幕は「斑幕（まだらまく）」または「斑幔（はんまん）」と呼ばれます。その中でも代表的なのが、紅白の縦縞模様の「紅白幕」です。これは結婚式や入学式、卒業式といった慶事に広く使われますが、視覚的な効果からバーゲンセールなどにも利用されます。慶事では紅白の幕紐（幕縄）が一緒に使われるのが一般的です。
これに対して、白黒の縦縞模様の「鯨幕（くじらまく）」は、「蘇幕」とも呼ばれ、通夜や葬儀などの弔事で主に用いられます。この使い方が一般的になったのは比較的最近で、昭和初期以降に葬儀業者によって広められたとされています。名前の由来は、鯨の体が白黒であることや、黒い皮を剥いだ後の身が白いことなど諸説あります。古来日本では弔事に白が用いられましたが、本来鯨幕は慶弔問わず使われ、旧暦で神事を行う地域や格式の高い神社、皇室では慶事にも使われています。
「浅黄幕（あさぎまく）」は、浅黄（浅葱色、やや濃い水色に近い青色）と白の縦縞で構成され、「青白幕」とも呼ばれます。地鎮祭や上棟式といった神事で使われるほか、葬儀にも用いられ、紅白幕や鯨幕よりも歴史が古い可能性が指摘されています。歌舞伎では、舞台効果のために使われる浅黄色一色の幕も「浅黄幕」と称されます。
仏教の行事などで見られるのは、五色の縦縞模様の「五色幕（ごしきまく）」または「五色幔幕」です。紅白幕、鯨幕、浅黄幕以外にも、紺白幕、紫白幕、黒黄幕など様々な配色の斑幕があります。
特定の柄が描かれた「柄幕」もあり、市松模様の「市松柄幕」、桜や紅葉、あるいは「大漁」といった文字や絵柄が描かれた幕などがあり、各種イベントを彩ります。「旭光幕（きょっこうまく）」は、半円形で中心から放射状に3色に塗り分けられた幕で、「オープン幕」とも呼ばれ、店舗の開店時やパーティー会場などで連ねて装飾として使われます。
記念碑などの御披露目で行われる「除幕式」で、対象物を覆い隠しておくために使われるのが「除幕式用幕（除幕布）」です。神社やお寺の祭礼などで用いられるのは「社寺幕」で、豪華な幕房（揚巻房、絞り房など）が取り付けられることもあります。これらは「奉納幕」として社寺に納められることもあります。家庭で慶事の際に玄関に張られる幕は「門幕（玄関幕）」と呼ばれ、社寺幕と同様に幕房が付くこともあります。また、花見の際に使う「花見幕」もあります。
情報を伝えたり、何かを告知したり、応援したりするために使われる大型の幕もあります。横に長いものを「横断幕」、縦に長いものを「懸垂幕（垂れ幕、タペストリー、バックドロップ）」と呼び分けます。素材としては、丈夫なビニール系のターポリンや、ポリエステル系のポンジ、トロピカル、あるいは綿系の金巾、葛城などが用いられます。懸垂幕は、旗竿に吊るす幟（のぼり）のような形で掲示されることもあります。
これらの幕は、イベント開催の告知、祝賀のメッセージ（くす玉に添えられることも）、スポーツ観戦などでの応援（応援幕）、店舗や商品の広告宣伝など、幅広い用途で活用されています。スーパーや百貨店では新商品やキャンペーンの告知が大きく表示され、官公庁では「交通安全強調月間」といった啓発メッセージが建物の外壁に掲げられることもあります。工事現場では、工事中であることを知らせる注意喚起の幕や、工事会社や新しい工法を宣伝するための「養生幕」なども見られます。
その他、商店の店先に縦に斜めに張り出して、広告や日除けの役割を果たす「店頭幕（日除け幕）」や、列車やバスの前面や側面に表示され、行き先を示す「方向幕」など、私たちの身の回りの様々な場面で「幕」は活用されています。
舞台や映写に使われる幕
劇場の装置として重要な役割を果たすのが「舞台幕」です。多種多様なものが存在しますが、中でも最も常設的で重要なのは「緞帳（どんちょう）」で、大きな布地で舞台と観客席の間を区切ります。歌舞伎などで使われる、舞台と客席を仕切る引き戸式の幕は「定式幕（じょうしきまく）」と呼ばれます。舞台の袖や東西に用いられる「袖幕」「東西幕」や、舞台上部に横に張られる「水引幕」などもあります。水引幕は、相撲の土俵上の屋根や、飲食店、屋台などの間口に商品名などを表示するために使われることもあります。また、場面転換のために舞台を一時的に暗く覆う「暗転幕」もあります。
舞台芸術においては、演劇の場面区分を表す単位としても「幕」という言葉が使われます。「部」「幕」「場」のように区分が細かくなり、文楽や歌舞伎の「段」にあたります。この用法から転じて、物事の段階や区切りを表現する言葉としても広く用いられます。「開幕」「幕が上がる」「終幕」「幕を下ろす」「幕切れ」といった表現はその例です。「黒幕」や「幕の内弁当」といった言葉も、舞台に由来すると言われています。
映画館で映像を映し出すために使われる白い布は「銀幕（ぎんまく）」と呼ばれ、「映写幕」とも言います。また、光を遮断する目的で使われるのが「暗幕（あんまく）」です。スライド映写やフィルム現像など、暗い環境が必要な場面で役立ちます。一般的には黒い布が多く使われ、カーテンが代用されることもありますが、赤外線を完全に遮断することはできません。
式典や祭礼に使われる幕
式典や祭礼、野外での催しなどで、特定の空間を囲うように張られる幕を「幔幕（まんまく）」と言います。特に、野外で陣地を設営する際に使われるものは「陣幕」と呼ばれます。
複数の色の布を一定間隔で交互につないで作られた幕は「斑幕（まだらまく）」または「斑幔（はんまん）」と呼ばれます。その中でも代表的なのが、紅白の縦縞模様の「紅白幕」です。これは結婚式や入学式、卒業式といった慶事に広く使われますが、視覚的な効果からバーゲンセールなどにも利用されます。慶事では紅白の幕紐（幕縄）が一緒に使われるのが一般的です。
これに対して、白黒の縦縞模様の「鯨幕（くじらまく）」は、「蘇幕」とも呼ばれ、通夜や葬儀などの弔事で主に用いられます。この使い方が一般的になったのは比較的最近で、昭和初期以降に葬儀業者によって広められたとされています。名前の由来は、鯨の体が白黒であることや、黒い皮を剥いだ後の身が白いことなど諸説あります。古来日本では弔事に白が用いられましたが、本来鯨幕は慶弔問わず使われ、旧暦で神事を行う地域や格式の高い神社、皇室では慶事にも使われています。
「浅黄幕（あさぎまく）」は、浅黄（浅葱色、やや濃い水色に近い青色）と白の縦縞で構成され、「青白幕」とも呼ばれます。地鎮祭や上棟式といった神事で使われるほか、葬儀にも用いられ、紅白幕や鯨幕よりも歴史が古い可能性が指摘されています。歌舞伎では、舞台効果のために使われる浅黄色一色の幕も「浅黄幕」と称されます。
仏教の行事などで見られるのは、五色の縦縞模様の「五色幕（ごしきまく）」または「五色幔幕」です。紅白幕、鯨幕、浅黄幕以外にも、紺白幕、紫白幕、黒黄幕など様々な配色の斑幕があります。
特定の柄が描かれた「柄幕」もあり、市松模様の「市松柄幕」、桜や紅葉、あるいは「大漁」といった文字や絵柄が描かれた幕などがあり、各種イベントを彩ります。「旭光幕（きょっこうまく）」は、半円形で中心から放射状に3色に塗り分けられた幕で、「オープン幕」とも呼ばれ、店舗の開店時やパーティー会場などで連ねて装飾として使われます。
記念碑などの御披露目で行われる「除幕式」で、対象物を覆い隠しておくために使われるのが「除幕式用幕（除幕布）」です。神社やお寺の祭礼などで用いられるのは「社寺幕」で、豪華な幕房（揚巻房、絞り房など）が取り付けられることもあります。これらは「奉納幕」として社寺に納められることもあります。家庭で慶事の際に玄関に張られる幕は「門幕（玄関幕）」と呼ばれ、社寺幕と同様に幕房が付くこともあります。また、花見の際に使う「花見幕」もあります。
広告や宣伝に使われる幕
情報を伝えたり、何かを告知したり、応援したりするために使われる大型の幕もあります。横に長いものを「横断幕」、縦に長いものを「懸垂幕（垂れ幕、タペストリー、バックドロップ）」と呼び分けます。素材としては、丈夫なビニール系のターポリンや、ポリエステル系のポンジ、トロピカル、あるいは綿系の金巾、葛城などが用いられます。懸垂幕は、旗竿に吊るす幟（のぼり）のような形で掲示されることもあります。
これらの幕は、イベント開催の告知、祝賀のメッセージ（くす玉に添えられることも）、スポーツ観戦などでの応援（応援幕）、店舗や商品の広告宣伝など、幅広い用途で活用されています。スーパーや百貨店では新商品やキャンペーンの告知が大きく表示され、官公庁では「交通安全強調月間」といった啓発メッセージが建物の外壁に掲げられることもあります。工事現場では、工事中であることを知らせる注意喚起の幕や、工事会社や新しい工法を宣伝するための「養生幕」なども見られます。
その他、商店の店先に縦に斜めに張り出して、広告や日除けの役割を果たす「店頭幕（日除け幕）」や、列車やバスの前面や側面に表示され、行き先を示す「方向幕」など、私たちの身の回りの様々な場面で「幕」は活用されています。
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