練馬大根

練馬大根：江戸時代から続く練馬の伝統野菜

練馬大根は、東京都練馬区を代表する伝統野菜です。練馬区の土壌、特に関東ローム層が栽培に適していることから、古くからこの地で盛んに栽培されてきました。その歴史は江戸時代まで遡り、現在も地域住民の熱意によって受け継がれています。

練馬大根の特徴

練馬大根は、大きく分けて「尻細大根」と「秋詰まり大根」の2種類があります。

尻細大根: 沢庵漬けに最適な品種として知られています。首と下部が細く、中央部が太い独特の形状をしています。長さはおよそ75～90cm、重さは約1.6kgにもなります。
秋詰まり大根: 煮物や浅漬けなどに適しています。尻細大根と比べて辛味が強く、早生と晩生の2種類があります。早生は長さ約60cm、重さ約1.5kg、晩生は約45cm、約1.9kgと、それぞれサイズが異なります。早生は頭がやや細く、晩生はほぼ円筒形をしています。

いずれの種類も辛味が強く、水分が少ないのが特徴です。このため、乾燥しやすく、沢庵漬けの原料として非常に適していると言えるでしょう。

練馬大根の利用方法

練馬大根は、様々な形で地元で利用されています。

沢庵漬け: 練馬区の委託により栽培された練馬大根の一部は、「ねりま本干沢庵」として販売されています。練馬大根の水分が少ないという特性を生かし、風味豊かな沢庵が作られています。
練馬大根引っこ抜き大会: 練馬大根の収穫の難しさ、「引っこ抜きづらさ」を活かしたイベントとして、JA東京あおば主催の「練馬大根引っこ抜き大会」が開催されています。参加者は、大根の本数と長さで競い合います。
地産地消: 練馬区立小学校では、「練馬大根スパゲティ」という給食メニューが提供され、地産地消の取り組みが行われています。
収穫体験: 農家さんの畑で、練馬大根の収穫体験を実施する取り組みも行われています。2011年には4戸の農家で実施されました。

練馬大根の歴史

練馬大根の文献上の初見は、1683年（天和3年）に刊行された地誌「紫の一本」です。その後、1697年（元禄10年）刊の「本朝食鑑」にも、江戸近郊の優れた大根として名前が挙げられています。

練馬大根が広く知られるようになったのは、江戸時代のことです。当時の東京府は全国最大の沢庵漬けの産地であり、その中心は現在の練馬区でした。練馬の農家は、武家屋敷に沢庵漬けを納めていた記録が残っています。明治時代に入ると、生産が更に盛んになり、1877年（明治10年）の第1回内国勧業博覧会では、練馬の農家が作った沢庵漬けが高く評価されました。

しかし、昭和8年の大干ばつやモザイク病の大発生、太平洋戦争後の沢庵の大口需要の減少、食生活の洋風化、そして都市化による農地の減少などにより、練馬大根の生産は次第に衰退していきました。昭和52年には、主生産地が群馬県に移ったと言われています。

近年では、練馬区による「練馬大根育成事業」や「伝来種保存事業」など、伝統野菜を守ろうとする取り組みが活発に行われています。「練馬大根引っこ抜き競技大会」なども、地域住民の練馬大根への愛着を示すものです。

練馬大根にまつわる石造物

練馬区内には、練馬大根の歴史と関わりの深い石造物がいくつか残されています。

又六庚申塔: 練馬大根の育成に貢献したとされる人物「又六」の実在を示唆する石造物です。
練馬大根の碑: 又六を記念して建立された高さ464cmの碑です。
鹿島安太郎翁の顕彰碑: 又六の子孫で、練馬大根の品種改良や栽培・加工に貢献した鹿島安太郎を記念して建てられた高さ443cmの碑です。
愛染院の鐘楼: 1701年（元禄14年）に造られた鐘楼で、礎石には沢庵石が使われています。

これらの石造物は、練馬大根の歴史と人々の努力を物語る貴重な文化財です。現在も、練馬区では練馬大根の栽培と保存に取り組んでおり、その伝統は未来へと引き継がれていくでしょう。

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