縮瞳

縮瞳（Miosis）とは

医学において、縮瞳とは、様々な原因によって瞳孔が過度に縮小する現象を指します。通常、瞳孔は明るい場所では小さく、暗い場所では大きくなるように調節されますが、縮瞳の状態では、暗闇でも瞳孔が狭まったままになります。この状態は別名、瞳孔括約とも呼ばれ、瞳孔の開きが小さくなることで、視覚に影響を与える可能性があります。

反対に、瞳孔が広がる状態は散瞳と呼ばれます。

縮瞳のメカニズム

瞳孔の大きさを調節する役割を担うのは虹彩で、虹彩には2種類の筋肉が存在します。

円形筋（瞳孔括約筋）: 副交感神経系の刺激によって収縮し、瞳孔を小さくします。
放射状筋（瞳孔散大筋）: 交感神経系の刺激によって収縮し、瞳孔を大きくします。

これらの筋肉は、それぞれ異なる神経系の影響を受け、瞳孔の大きさを調整します。縮瞳は、主に以下の2つの原因によって引き起こされます。

1. 副交感神経系の過剰な活動: 副交感神経系の刺激が過剰になると、瞳孔括約筋が強く収縮し、瞳孔が小さくなります。
2. 交感神経系の活動の低下: 瞳孔散大筋の収縮を促す交感神経系の活動が低下すると、瞳孔を拡大する力が弱まり、結果として瞳孔が小さくなります。

これらの原因は、神経伝達物質の異常、特定の薬物、または疾患によって引き起こされることがあります。

縮瞳の原因

縮瞳の主な原因は以下の通りです。

薬物: 特定の薬物（例えば、ピロカルピン、アセチルコリン、フィゾスチグミンなどの縮瞳薬）は、瞳孔を収縮させる作用があります。また、モルヒネなどの麻薬も縮瞳を引き起こすことがあります。
疾患: ホルネル症候群、神経梅毒、延髄外側症候群などの神経系の疾患は、瞳孔の調節機能に影響を与え、縮瞳を引き起こすことがあります。
外傷: 眼や脳への外傷が、神経系の損傷を引き起こし、縮瞳を引き起こすことがあります。
神経毒: サリンなどの神経毒は、神経系に作用し、縮瞳を引き起こします。

縮瞳薬（Miotics）

縮瞳薬は、瞳孔を収縮させる作用を持つ薬物の総称です。これらの薬物は、主に眼科領域で使用され、以下のような目的で利用されます。

緑内障の治療: 縮瞳薬は、眼内の圧力（眼圧）を下げる効果があり、緑内障の治療に用いられます。
眼の検査: 縮瞳薬は、網膜や眼の奥の構造を検査する際に、瞳孔を小さくすることで、より詳細な観察を可能にします。
無痛性毛様体痙攣の緩和: 毛様体筋の痙攣によって引き起こされる痛みを緩和するために使用されます。

代表的な縮瞳薬には、ピロカルピン、アセチルコリン、フィゾスチグミン、エゼリンなどがあります。

縮瞳に関連する病態

縮瞳は、以下のような状態と関連しています。

ホルネル症候群: 交感神経系の障害によって、縮瞳、眼瞼下垂（まぶたが下がる）、眼球陥没などが起こる症候群です。
神経梅毒: 梅毒の病原菌が神経系に侵入し、瞳孔異常を含む神経症状を引き起こすことがあります。
延髄外側症候群: 脳幹の一部である延髄に障害が起こることで、様々な神経症状を引き起こす疾患です。縮瞳もその一つです。

まとめ

縮瞳は、様々な原因によって瞳孔が過度に小さくなる状態であり、その原因を特定し、適切な治療を行うことが重要です。縮瞳を引き起こす疾患や薬物の影響を理解することで、より適切な対応が可能になります。

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