散瞳

散瞳（さんどう、mydriasis）

散瞳とは、医学用語で、病気、薬物、外傷などによって瞳孔が異常に大きく広がった状態を指します。通常、瞳孔は暗い場所では拡大し、明るい場所では縮小しますが、散瞳を起こした瞳孔は、明るい場所でも過度に広がったままになります。この状態は瞳孔散大とも呼ばれます。反対に、瞳孔が縮小することを縮瞳といいます。

メカニズム

瞳孔の大きさを調節しているのは、虹彩にある2種類の筋肉です。円状の筋肉と放射状の筋肉があり、前者は副交感神経系、後者は交感神経系の刺激を受けます。

• - 交感神経系の刺激: α1アドレナリン受容体を介して放射状の筋肉が収縮し、瞳孔が拡大します。
• - 副交感神経系の刺激: 円状の筋肉が収縮し、瞳孔が縮小します。

散瞳は、これらの神経刺激に関わる物質の作用によって引き起こされます。主な原因は、瞳孔を収縮させる副交感神経の遮断、または交感神経系の過剰な刺激です。

具体的には、以下のような物質が関与します。

• - アトロピン: ムスカリン性アセチルコリン受容体を阻害します。アセチルコリンは副交感神経の神経伝達物質であり、その作用が遮断されると瞳孔は収縮できなくなります。
• - ノルアドレナリン: 交感神経系の神経伝達物質であり、瞳孔を拡大させます。
• - コカイン、MDMA（エクスタシー）: 神経シナプスにおけるノルアドレナリンの再取り込みを阻害します。コカイン溶液が目に滴下されると、ノルアドレナリンが神経に再吸収されず、濃度が上昇し、散瞳を引き起こします。

散瞳薬

散瞳を引き起こす物質は散瞳薬（mydriatics）と呼ばれます。アトロピン硫酸塩、フェニレフリン塩酸塩、トロピカミドなどの薬剤が医療現場で使用されています。これらの薬剤は、網膜や眼の奥の構造を検査したり、有痛性の毛様体痙攣を和らげたりするために用いられます。

関連項目

• - 縮瞳
• - ベラドンナ
• - 対光反射

外部リンク

• - FPNotebook
• - GPNotebook

もう一度検索