繊維土器

繊維土器とは、縄文時代早期から前期にかけて作られた土器の一種で、制作時に胎土（土器の основとなる粘土）に意図的に植物の繊維を混入させたものを指します。

繊維土器の特徴

繊維の痕跡: 焼成が不十分なため、土器表面の繊維は抜け落ち、細い溝状のくぼみとなります。しかし、内部の繊維は炭化して残存し、断面を見ると漆黒色に見えます。
使用された繊維: 主にイネ科のような繊維質の植物が使用され、丁寧に精製されたものが用いられました。
繊維の方向: 土器の底部以外では、繊維は横方向に走っていることが多いです。これは、粘土ひもを積み上げて成形する際に、粘土ひもを引き延ばす工程で繊維が引き伸ばされたためと考えられます。
製作目的: 粘土の粘性を抑え、乾燥時のひび割れを防ぐ目的があったと推測されています。

繊維土器の分布と変遷

繊維土器は、関東地方では早期中葉の田戸上層式から現れ、前期中葉の黒浜式を最後に消失します。地理的には、関東以北の東北地方や北海道で広く作られました。

関東地方: 花積下層式、関山式、黒浜式などの土器に、羽状縄文、コンパス文、ループ文といった縄文が隙間なく施されました。特に、関山式の縄文原体は、複節や複々節といった複雑な構造を持つことが知られています。
東北地方: 円筒下層式土器に羽状縄文が発達しました。
* 北海道: 北海道南部では円筒下層式の系譜を引く土器群が製作され、中部から道東地方にかけては、北筒式という独自の繊維土器が作られました。

繊維土器研究の先駆者：山内清男

山内清男は、縄文前期前半の土器型式を研究する中で、繊維土器という特色を発見しました。彼の研究は、繊維土器の研究において重要な ভিত্তিとなっています。

参考文献
山内清男「関東北に於ける繊維土器」『史前学雑誌』1-2、昭和4年。

もう一度検索