織田信武

織田 信武の生涯と業績

織田信武（おだ のぶたけ）は、江戸時代前期に活躍した大名で、大和国（現在の奈良県）の宇陀松山藩の第4代藩主でした。彼は明暦元年（1655年）に3代藩主・織田長頼の長男として江戸で誕生し、幼名は乱麻呂（らんまろ）で知られています。信武の通称は右近であり、彼は従四位下・出雲守という官位を持ち、伊豆守としても知られています。

藩主としての活動

信武は、寛文6年（1666年）に4代将軍・徳川家綱との初めての面会を果たし、寛文12年（1672年）には従四位下・出雲守に叙任されました。また、延宝5年（1677年）には尾張藩2代藩主・徳川光友の養女である智姫と結婚し、元禄2年（1689年）には父・長頼の死去に伴い家督を相続します。

松山藩織田家の石高は2万8000石と小規模でしたが、織田信長の次男である信雄の直系であったため、その当主には従四位下・侍従の官位と国主大名としての地位が与えられていました。元禄3年（1690年）には、藩主として初めてのお国入りの許可を得ることができましたが、元禄4年（1691年）には正室の智姫が死去します。信武はその後、再婚相手として智姫の妹である清姫を迎えました。

突然の自殺とその影響

信武の人生は1694年10月30日に急変します。その日、松山陣屋で突然自ら命を絶ちました。享年は40歳でした。彼の自殺の原因は公式には乱心とされており、宇陀崩れと呼ばれる家の内紛が背景にあったと考えられています。信武の治世中、宇陀松山藩は家臣団の間で「古参衆」と呼ばれる古くからの家来と、「加賀衆」といった前田家から転仕した家来たちの2つの派閥に分かれていました。特に中山正峯を含む加賀衆との対立が深刻化し、元禄7年（1694年）9月下旬には信武が古参の家来・田中安定を手討ちにする事態に至ります。

その後、信武は病気を理由に登城を拒否した生駒則正に対しても、藩士を派遣し一族全てを討ち取りました。この一連の事件は藩の財政政策を巡る対立の結果であり、外部に知れ渡り幕府の耳にも入ります。その動揺から信武は自殺に至ったのです。

幕府の介入と信武の後

信武の死後、幕府は織田家に対し、8千石の減封と丹波国柏原への転封を命じました。柏原は当初城も陣屋もない貧しい地で、藩政の始動は困難を極めました。このような大騒動にもかかわらず、大名家への配慮もあり、改易や大幅減封が回避されたことから、幕府と徳川家の「織田家」への特別な配慮が伺えます。

信武の人となり

『土芥寇讎記』には、信武の性格や業績について「文道を好み、武法に精緻」と評価されています。奢ることなく藩民を慈しみ、「仁勇」の持ち主であり、悪事がなかったと言われています。彼の舞楽への関心も父・長頼の代に似ていたとされています。

彼には正室の智姫、継室の清姫のほかに、男子の織田信休、易麻呂という名前が残り、女子は松平義昌の養女として内藤政貞の正室になっています。信武の短い生涯は悲劇に終わりましたが、彼の業績や人柄は、江戸時代の大名の一つの象徴的存在として語り継がれています。

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