羅南師管区

羅南師管区（らなんしかんく）

羅南師管区は、第二次世界大戦末期の1945年（昭和20年）4月1日に、大日本帝国陸軍によって設置された軍事行政上の区分、すなわち師管区の一つです。この師管区は、担当地域における徴兵事務をはじめとする軍事行政全般、そして地域防衛を主な任務としていました。

師管区制度の概要

師管区という制度は、それまで存在した師管という地域区分を改称したものです。これは単なる名称変更にとどまらず、軍事行政と地域防衛を一体的に担う新たな単位として位置づけられました。具体的には、その地域から兵士を徴集するための徴兵区であると同時に、有事の際にはその地域を防衛する責任を負う防衛担当区域でもありました。各師管区は、それぞれが属する軍管区司令部などの上位組織の指揮下に置かれ、その活動を行いました。

管轄地域と構成

羅南師管区が管轄したのは、現在の北朝鮮北東部に位置する広大な地域でした。日本海に面した咸鏡北道（かんきょうほくどう）と咸鏡南道（かんきょうなんどう）の全域がその範囲とされました。この管轄地域内は、さらに詳細な行政単位に分割されており、具体的には羅南兵事区と咸興（かんこう）兵事区という二つの兵事区が設けられていました。これらの兵事区は、主に徴兵事務などを担当した下部組織です。

羅南師管区は、朝鮮半島全体を管轄していた朝鮮軍管区の指揮下に位置づけられていました。同じ朝鮮軍管区の指揮下には、羅南師管区の他にも平壌師管区、京城師管区、大邱師管区、光州師管区といった師管区が置かれており、それぞれが朝鮮半島内の特定地域を管轄していました。

設置の経緯

羅南地域には、過去にも軍事行政区分が設けられていた時期がありました。具体的には、1941年（昭和16年）11月1日から1943年（昭和18年）7月1日までの間、「羅南師管」が存在していました。しかし、その後一時的に朝鮮半島から師管の区分は廃止されていました。太平洋戦争の戦局が悪化し、本土決戦への備えなどが急務となる中で、1945年4月1日に師管制度が師管区制度へと再編・改称された際に、羅南地域にも再び師管区が設置されることとなったのです。

羅南師管区の設置に伴い、その指揮・管理を担う羅南師管区司令部が設けられました。多くの師管区司令部が、既存の留守師団などを改編・改称して編成されたのに対し、羅南地域には当時、こうした改編の母体となる適切な部隊が存在しませんでした。そのため、羅南師管区司令部は新規に編成が行われました。その編成が完了し、部隊としての体制が整った動員完結日は、1945年3月15日とされています。司令部だけでなく、師管区の任務、特に徴兵によって集められた兵士を訓練し、各部隊へ送り出す役割を担う羅南師管区部隊も編成され、これに含まれる補充隊なども新規に動員・編成されました。

羅南師管区の初代司令官には、西脇宗吉（にしわき そうきち）中将が1945年4月1日付で就任しました。

終焉

羅南師管区は、その設置からわずか数ヶ月で実質的な役割を終えることとなりました。1945年8月、日本の敗戦により、朝鮮半島における大日本帝国陸軍の軍事行政機構は事実上、機能を停止しました。羅南師管区も例外ではなく、軍事行政や地域防衛という本来の意義を失いました。組織としては、形式的に存続していましたが、実態は伴わず、最終的に1946年（昭和21年）3月31日をもって正式に廃止されました。

羅南師管区は、第二次世界大戦末期における日本の軍事行政再編と、朝鮮半島における軍事体制の一端を示す組織でした。

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参考文献

* 防衛庁防衛研修所戦史室 編『本土決戦準備』 1（関東の防衛）、朝雲新聞社〈戦史叢書〉、1971年。

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