羅禅征伐

羅禅征伐について

羅禅征伐（ナソンせいばつ）は、1652年から1689年にかけてロシアと清の間で起こった軍事衝突の中で、朝鮮が関与した重要な戦闘を指します。この事件は、特に1654年と1658年に行われた二度の戦いが注目されており、朝鮮が清軍と連携してロシアの侵攻に立ち向かったことが特徴的です。

紛争の背景

羅禅という名称は、朝鮮漢字音におけるロシア人を指す言葉です。ロシアは黒龍江流域の資源を探検し、1651年にはこの地域にアルバジン砦を設立しました。この拠点は、ロシアの毛皮収集の中心となり、周辺の狩猟民との衝突を引き起こしました。清軍はこの紛争に介入し、ロシアの軍事的行動に対抗しました。

翌年、ロシアはウスリー川の河口にも砦を築き、松花江方面にまでその活動を広げていきました。この動きに対して寧古塔に駐在していた清軍が対応策を講じ、鉱山などを襲撃し、ロシア軍を追い払おうとしましたが、清軍は装備が不十分であったため敗北を喫します。

朝鮮の参戦の経緯

1654年、清は朝鮮へ使者を派遣し、朝鮮軍の参加を要請します。朝鮮王の孝宗は、ロシアに関する情報収集を行い、やがて指揮官に辺岌を任命しました。辺岌は早速部隊を編成し、100名の鳥銃軍を率いて戦地へ向かいました。

辺岌の指揮する朝鮮軍は、早期に寧古塔に到着し、清軍と合流後、黒龍江方面に進軍します。最初の衝突は、1654年5月に発生し、ロシア軍を撃退することに成功しました。この戦闘で朝鮮軍は、清軍の期待に応え、火器を駆使してロシアに対抗したことが評価されました。

1658年には、清による再度の朝鮮軍派遣要請があり、朝鮮は200名の軍を派遣しました。今回の戦闘では、朝鮮軍の活躍により、ロシア軍を混乱させ、ロシアの大型軍艦に対し小型船で立ち向かう奇襲作戦を展開します。この作戦は成功し、多くのロシア軍兵士が戦死しましたが、清軍の指揮者が戦利品に目が眩み、火を消すように命じたため、一時的な混乱が生じました。

戦後の影響

羅禅征伐は、孝宗が計画していた北伐の一環として見ることができ、朝鮮の射撃術や戦術の優れた能力を示す結果となりました。1686年に清軍がアルバジン砦を攻略した後、清とロシアの間にネルチンスク条約が締結され、後にキャフタ条約により国境が定められました。これにより、ロシアと清の貿易が始まり、時代の変遷がもたらされました。

文学・ドラマにおける羅禅征伐

この歴史的事件は、文学やドラマにおいても取り上げられています。特に、申瀏の日記を基にした『北征録』や、朝鮮時代の小説『裴是愰伝』などがその一例です。また、2012年から2013年にかけて放送された韓国MBCの『馬医』でもその影響を見ることができます。

以上のように、羅禅征伐は日本や中国とは異なり、朝鮮の歴史において特異な役割を果たした軍事衝突でもあり、当時の国際関係や軍事戦略における重要な出来事として記憶されています。

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