美しき愛の掟

美しき愛の掟（うつくしきあいのおきて）

「美しき愛の掟」は、1969年3月25日にリリースされた、日本のロックバンド、ザ・タイガースによる通算9枚目のシングル楽曲です。

このシングルは、グループにとって大きな転換期に発表されました。中心メンバーの一人であった加橋かつみが脱退した直後の、いわば「第1弾」として世に出された記念碑的な作品と言えます。発売されるや否や大きな反響を呼び、オリコンチャートでは最高位4位を獲得するなど、当時のザ・タイガースの人気健在ぶりを示すヒットとなりました。

楽曲の制作には、脱退という予期せぬ出来事が影を落としています。実は、「美しき愛の掟」のレコーディング自体は、加橋かつみがまだグループに在籍していた1969年2月5日に行われていました。しかし、その後のメンバーチェンジに伴い、急遽対応が必要となりました。発売日が3月25日に迫る中、残された時間はわずか。新たなメンバーとして岸部シローが迎え入れられたことに伴い、発売まで1ヶ月を切った切迫したスケジュールの中で、メインボーカル以外のコーラス部分について、岸部シローを含む新体制での録り直しが慌ただしく行われたのです。

一方、このシングルにカップリング曲として収められた「風は知らない」も、A面曲と同じ1969年2月5日にレコーディングされていました。しかし、こちらはタイトなスケジュールの中で、コーラス部分の録り直しを行う余裕がなかったと言われています。そのため、「風は知らない」の音源では、録り直し前の加橋かつみの声がはっきりと聞き取れるという、当時の状況を物語る貴重な記録が残されています。

このシングルは、収録された二つの楽曲の音楽性においても特筆すべき点があります。A面の「美しき愛の掟」は、サイケデリック・ロックやヘヴィ・ロックの要素を取り入れ、ヴァニラ・ファッジのような海外アーティストの影響を思わせる、当時の日本のロックシーンにおいて新興勢力として注目され始めていた「ニュー・ロック」のサウンドを基調としています。それに対し、カップリングの「風は知らない」は、アコースティックな響きを持つフォークソングのテイストが色濃い楽曲です。このA面とB面で対照的な音楽性を持つシングルとなった背景には、当時、一世を風靡したグループ・サウンズ（GS）のブームが終息に向かい、それに代わる日本のポピュラー音楽の新たな潮流として、ニュー・ロックとフォークという二つの大きな動きが台頭してきた時代の変化が反映されています。ザ・タイガースという人気グループが、こうした新しい音楽性を取り入れたことは、当時の日本の音楽シーンの多様化と進化を示す一例と言えるでしょう。

収録曲

美しき愛の掟 (A decree of love)
作詞: なかにし礼
作曲: 村井邦彦
演奏時間: 3分12秒
風は知らない (The wind doesn't know)
作詞: 岩谷時子
作曲: 村井邦彦
演奏時間: 3分38秒

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