美人計

美人計（びじんけい）は、兵法三十六計の第三十一計に数えられる戦術であり、敵を色仕掛けによって無力化することを目的としています。

美人計の概要

勢いのある敵に対して、正面から力で対抗することが困難な場合に有効な戦略です。敵の将軍に美女を献上し、その魅力によって敵将を篭絡します。これにより、敵将は美色に溺れ、政治や軍事への関心を失い、肉体的にも衰弱していきます。その結果、敵の組織全体が内部から崩壊していくことを期待する計略です。

美人計は、土地や財宝を献上するのとは異なり、自国への直接的な負担を軽減できるという利点があります。土地を献上すれば、戦国時代の六国が秦に服属した際のようになり、金銀財宝を献上すれば、宋が遼や金に服属した際のようになります。しかし、美人を献上することで、敵将を篭絡し、その野心や攻撃性を削ぐことができるのです。

また、敵の末端の兵士は、美人計によって直接的な利益を得ることができません。そのため、彼らは主君に対して不満を抱き、内部からの反乱を誘発する可能性もあります。

美人計の歴史的背景

美人計の代表的な例として、春秋時代末期の越と呉の戦いにおける故事が挙げられます。越は呉に滅ぼされそうになった際、范蠡（はんれい）が呉王・夫差（ふさ）に美女・西施（せいし）や鄭旦（ていだん）らを献上しました。夫差は西施に溺れ、政治を顧みなくなり、その結果、越は呉を滅ぼすことに成功したとされています。

美人計の現代的解釈と注意点

現代においては、美人計はハニートラップなどの形で応用されることがあります。しかし、相手を欺く行為であるため、倫理的な問題や法的なリスクを伴う可能性があることに注意が必要です。また、美人計が成功するかどうかは、敵将の性格や状況、献上する美女の魅力など、様々な要因に左右されます。

美人計は、敵を油断させ、内部から崩壊させるための巧妙な戦略ですが、実行には慎重な検討と計画が必要です。

関連事項

ハニートラップ
美人局（つつもたせ）

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