西施

西施：中国を揺るがした絶世の美女

西施（せいし）は、中国古代四大美女の一人として名高い女性です。紀元前5世紀、現在の浙江省に生まれたと伝えられています。本名は施夷光（せいいこう）といい、西施という名は、出身地の村名が由来とされています。

西施の美しさは伝説となり、その容姿は後世の芸術作品や文学作品に繰り返し描かれてきました。中でも有名なのが、越王勾践による呉への美人計です。勾践は呉王夫差を滅ぼすため、西施を献上しました。西施の美しさに心を奪われた夫差は国政を顧みなくなり、その隙をついた越は呉を滅ぼしました。

西施のその後については諸説あります。夫差の死後、越王勾践の側室となった西施は、勾践の妃から危険視され、暗殺されたという説が広く知られています。その際に長江に投げ込まれた西施の舌が、蛤になったという言い伝えも存在します。一方で、越の宰相范蠡とともに越を脱出し、余生を平和に過ごしたという説もあります。

西施の美貌は「沈魚（ちんぎょ）」と称えられ、川で洗濯をしている西施の姿に魚が魅入られて沈んだという逸話があります。しかし、一方で西施には大根足という欠点があったという俗説も伝わっています。

西施は、中国文化に深く根付いた存在です。西湖（西子湖）という湖の名は、西施に由来しています。また、西施を祀る西施殿も存在します。西施にちなんだ事物も多く、西施乳（フグの白子）、西施臂（レンコン）など、様々なものが西施の名を冠しています。

西施は多くの芸術作品にも登場します。唐代の詩人である李白や王維は西施を題材にした詩を詠み、日本の俳聖・松尾芭蕉も「奥の細道」で西施に言及しています。現代においても、小説やテレビドラマで西施は取り上げられ、その生涯は人々の心を掴んで離しません。

さらに、西施にまつわる有名な四字熟語に「顰に倣う（ひそみにならう）」があります。これは、西施の表情を真似た醜い女性が、かえって醜さを際立たせたという故事から生まれた言葉です。これは、むやみに人の真似をすることの愚かさを戒める教訓となっています。西施の胸を押さえる仕草を表す「西施捧心」もまた、有名な四字熟語です。

西施は、歴史上の人物であると同時に、中国文化を象徴する伝説的な美女として、人々の記憶に深く刻まれています。その生涯は謎に包まれた部分も多いですが、西施の美貌と悲劇的な運命は、現代に生きる私たちにも強い印象を与え続けています。西施を取り巻く数々の逸話や伝説は、彼女の圧倒的な美しさと、その美しさゆえの波乱に満ちた人生を物語っています。西施の物語は、歴史と伝説の狭間で永遠に語り継がれるでしょう。

西施と同時に美貌で知られ、呉王夫差の後宮に入った鄭旦も、西施とともに数々の作品で描かれています。他にも、西施と並ぶ美女として毛嬙の名が挙げられています。彼女らの美貌は、後世に大きな影響を与え続けました。

西施は、単なる美女としてだけでなく、中国の歴史や文化、そして人間の業や運命を象徴する存在として、今もなお語り継がれています。

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