美山町上平屋

美山町上平屋（みやまちょうかみひらや）

京都府南丹市美山地区の中央部に位置する美山町上平屋は、清らかな自然に囲まれた山間の地域です。この地名は、旧美山町時代には大字（おおあざ）として存在していました。

地理

美山町上平屋は、南丹市の中でも特に豊かな自然が残る美山地区の中央部に広がっています。その地形は、集落の大半を山地が占めることが特徴で、地域の南端を、清流として知られる由良川が流れ下っています。この地を東西に結ぶ主要な交通路として、国道162号線が整備されており、人々の往来や物流の要となっています。

歴史

この地には、古くから人々が生活を営んできた歴史があります。現在の国道162号線の一部にあたる峠道には、かつて九鬼ヶ坂と呼ばれる難所がありました。この九鬼ヶ坂には、江戸時代頃まで数戸の家々からなる小さな集落が存在していましたが、残念ながら大火に見舞われ消滅し、以降は上平屋の一部として統合されたと伝えられています。

また、農業用水を巡る歴史も特筆されます。上流に位置する安掛（あがけ）集落との間で、水田に必要な水の確保を巡って度々対立が生じたことが記録されています。しかし、この問題に対し、上平屋の村民たちは外部の助けを借りることなく、自らの手でため池を建設するという方法で解決を図りました。このエピソードは、当時の人々の強い共同体意識と困難に立ち向かう粘り強さを示しています。

産業の面では、大正時代に至るまで桐箪笥の製造がこの地域の重要な産業として栄えました。弘化年間（1844年～1848年）には、地元の平井平助と平井与兵衛が京の都から箪笥作りの名工である利助と箪市を招き、その高度な製造技術を学びました。そして、彼らはその技術を惜しみなく地域の村民たちに広め、上平屋における桐箪笥産業の基礎を築き上げました。その功績を讃える「北桑箪笥創業頌徳碑」が、地域にある教誓寺の近くに建立されています。

近代においては、南丹市内で初めての火葬場が上平屋に設置されました。これは、京都府全体で見ても極めて早い時期の設置であり、当時の社会状況や地域の取り組みを物語る出来事です。

沿革

町村制が施行された1889年（明治22年）4月1日、北桑田郡に属していた上平屋村は、深見村や下平屋村など周辺の八つの村と合併し、新たに平屋村が発足しました。これにより、旧上平屋村の区域は大字「上平屋」となりました。

その後、昭和の大合併期にあたる1950年（昭和30年）4月1日には、平屋村が宮島村、大野村、知井村、鶴ヶ岡村と合併し、広域合併による美山町が誕生します。この際も、大字「上平屋」は美山町にそのまま引き継がれました。

さらに平成の大合併を経て、2006年（平成18年）1月1日、美山町は園部町、八木町、日吉町と合併し、現在の南丹市が発足しました。これにより、大字「上平屋」は「美山町上平屋」という地名となり、現在に至っています。

交通

地域内の主要な道路としては、東西を貫く国道162号線と、京都府道19号園部平屋線が挙げられます。これらの道路は、地域住民の生活のみならず、周辺地域との連携や観光においても重要な役割を果たしています。

主要施設

美山町上平屋には、地域の治安維持を担う南丹警察署平屋駐在所があります。また、教育施設としては、京都府立北桑田高等学校美山分校が置かれており、地域の高校教育を支えています。信仰の場としては、教誓寺や平林寺といった寺院が存在し、人々の心のよりどころとなっています。

出身著名人

この地からは、後世に名を残す人物も輩出されています。実業家として成功を収め、岩井商店（現：岩井産業）を創業した岩井文助は上平屋の出身です。また、医学博士であり、丸山ワクチンを用いた診療所で多くの人々を治療し、過疎地の医療に人生を捧げた伊藤盛夫博士もこの地とゆかりが深い人物です。

その他

郵便に関する情報は、郵便番号が601-0721であり、集配業務は美山郵便局が行っています。

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