羽入佐和子

羽入佐和子

羽入佐和子（はにゅう さわこ）氏は、1948年に生まれた日本の哲学者です。長年にわたり高等教育機関で教鞭を執り、大学運営に深く関わったほか、日本の学術や文化、教育行政に関わる様々な重要な役職を歴任しました。特に、女性として初めて国立国会図書館長を務めたことは、その功績の中でも特筆すべき点です。

経歴

羽入氏は神奈川県立横浜平沼高等学校を卒業後、お茶の水女子大学文教育学部人文学科で哲学を学び、1973年に卒業しました。さらに研鑽を積み、1982年には同大学院博士課程を修了し、学術博士の学位を取得しています。

大学院修了後、母校であるお茶の水女子大学に奉職。1984年に文教育学部の講師となり、教育者としてのキャリアをスタートさせました。その後、1990年には助教授、1994年には大学院人間文学研究科の教授へと昇任し、哲学研究者および教育者として確固たる地位を築きました。2005年には大学の運営に深く関わるようになり、副学長兼附属図書館長に就任。この経験は、その後の大学全体のリーダーシップにつながる重要なステップとなりました。そして、2009年、日本の女子教育を牽引するお茶の水女子大学の学長に就任し、教育研究環境の整備や大学の発展に向けて手腕を発揮しました。

主な公的役職

大学運営に加え、羽入氏は国の重要な機関や委員会の役職を多数務めました。2006年には日本学術会議の連携会員に選出され、日本の学術振興にも貢献しました。2013年には国立大学協会副会長に就任し、全国の国立大学の連携強化や共通課題の解決に尽力しました。

2015年には理化学研究所の理事に就任し、最先端科学技術の研究推進に関与。また、文部科学省の科学技術・学術審議会学術分科会長代理を務めるなど、国の科学技術・学術政策の策定にも深く関与しました。この時期には、横浜国立大学や筑波大学の経営協議会委員、日本学術振興会賞審査会委員、日本学生支援機構運営評議会委員といった、教育・研究機関や関連団体の運営・評価に関わる委員会の委員としても活動しています。

特に注目されるのは、2016年に女性として初めて国立国会図書館長に就任したことです。国内外の重要資料を収集・保存し、国民の「知の拠点」として機能する国立国会図書館のトップとして、その運営とサービスの向上に尽力しました。同年には文部科学省の日本ユネスコ国内委員会副会長も務め、国際的な教育・科学・文化分野での日本の貢献にも関わりました。

2020年3月に国立国会図書館長を退職。その後も教育・研究分野での活動を続け、帝京大学先端総合研究機構の特任教授や城西大学の理事を務めています。長年にわたる教育、学術振興、文化行政への貢献が認められ、2021年には瑞宝重光章を受章しました。

著書

哲学研究者としての著作活動も行っており、主な著書に以下のものがあります。

• - 『ヤスパースの存在論 : 比較思想的研究』（北樹出版, 1996年）
• - 『思考のレシピ : 自分が自分であるために : 哲学からのヒント』（ディスカヴァー・トゥエンティワン, 2014年）

羽入佐和子氏は、哲学研究で培った深い思考力と、教育機関および国の主要機関で培った卓越したリーダーシップをもって、日本の学術・文化・教育行政の発展に多大な貢献をされた人物です。

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