羽越本線列車衝突事故

羽越本線列車衝突事故

1962年11月29日に発生した羽越本線の列車衝突事故は、国鉄が運営する羽越本線において、致命的な事故となりました。この事故は、当時の鉄道運行システムの脆弱性を浮き彫りにし、さらなる安全対策の必要性を認識させる出来事となりました。

事故の概要

事故は、22時15分頃、羽後本荘駅と羽後岩谷駅の間で発生しました。下り方向から走行していた867列車の機関車（D51形蒸気機関車637号機）と、上り貨物列車2050列車（DF50形ディーゼル機関車548号機）との正面衝突が起きました。この衝突は、両列車が直面し、ディーゼル機関車の前頭部が完全に粉砕、炎上するという甚大な被害をもたらしました。結果として、上り貨物列車の乗務員2名が死亡し、下り機関車の機関士と助士、見習いが重軽傷を負いました。

事故原因の詳細

事故当日の運行において、下り单行機関車は前照灯が故障していたため、羽後本荘駅に約1時間遅れで到着しました。このことにより、本来のダイヤから変更され、羽後岩谷駅で上り貨物列車と行き違うことが指示されました。通常、同区間では連査閉塞が施行されていましたが、詳細な信号機の運用状況は不明でした。

羽後岩谷駅での行き違いのため、閉塞の設定がなされましたが、下り単行機関車の整備が遅れている間に、羽後本荘駅の助役が下り列車の機関士に出発の合図を行いました。しかし、羽後本荘駅の信号係は連査閉塞を適切に取り扱う立場ではなく、誤って信号を進行に設定してしまいます。この結果、羽後岩谷駅では上り貨物列車が出発することとなり、羽後本荘駅の信号は停止を示しながらも下り列車は出てしまいました。加えて、車内警報機の設計上、信号機の現示に反応しないため、下り列車は停止信号を無視して進んでしまったのです。これらの要因が重なり、両列車の衝突を引き起こしたのです。

事故後の対応

この悲劇的な事故の結果、国鉄は信号システムと運行方法について見直しを行いました。特に、羽越本線の一部区間に発車ベルを設置し、信号機と連動させることで、命を守るための安全対策を強化することとなりました。また、事故現場付近に信号場を設置する予定が複線化の計画に変更されるなど、事故の影響は長期にわたり続きました。

国会ではこの事故が取り上げられ、運輸委員会において信号の進行現示や連査閉塞に関する問題が指摘されました。特に、単線での行き違いが可能な連査閉塞の欠陥が問題視され、この事故が新たな安全基準を生む契機となったのです。

事故車両のその後

事故に関与したDF50形ディーゼル機関車548号は、土崎工場で修理され、その後復帰しました。この機関車は当時最新鋭であり、無煙化の進展に寄与していました。また、D51形蒸気機関車637号も修復され、1969年まで運用されることとなりました。

慰霊の場

事故近くの共同墓地には慰霊碑が建立され、亡くなった方々を悼むための除幕式が行われました。これにより、事故の記憶を風化させず、今でも多くの人にその教訓を伝えています。

この事件は、鉄道の安全に関する多くの課題を露呈させ、以後の鉄道業界における改善への踏み出しを促進しました。我々は、先人の犠牲を忘れず、安全な交通社会の構築に努めるべきでしょう。

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