翁世資

翁世資（おう せいし）は、明代に活躍した官僚です。永楽13年（1415年）に生まれ、成化19年（1483年）に69歳で亡くなりました。字は資甫といい、興化府莆田県を本貫とします。

生い立ちと初期の官歴

父は翰林検討・掌国子助教を務めた翁瑛で、官僚の家系に生まれました。正統7年（1442年）に進士に及第し、戸部主事に任じられます。その後、景泰年間には戸部郎中に昇進しました。

工部右侍郎への転任と直言

天順元年（1457年）、翁世資は工部右侍郎に転任します。天順4年（1460年）、英宗が宦官に命じて蘇州、松江、杭州、嘉興、湖州で織彩幣7000匹の増産を計画した際、江南地方が洪水に見舞われ、民衆が困窮している状況を鑑み、増産を半減するよう進言しました。工部尚書の趙栄や工部左侍郎の霍瑄は難色を示しましたが、翁世資は単独で責任を負う覚悟で、連名で諫奏しました。英宗は激怒し、主導者を追及しましたが、翁世資は自ら名乗り出たため投獄され、衡州府知府に左遷されることとなりました。

地方官としての活躍と復帰

成化元年（1465年）、翁世資は江西左布政使に抜擢され、再び中央政界に復帰します。しかし、成化2年（1466年）には事件に連座して法吏に下されますが、潔白を証明し、無罪となって布政使に復職しました。広東で反乱が発生した際、討伐軍のための食糧輸送を江西から行う計画が持ち上がります。10万人の動員が見込まれましたが、翁世資は銀を広東に送り、現地で食糧を購入するよう進言し、民衆の負担を軽減しました。

山東巡撫としての功績

成化5年（1469年）、翁世資は右副都御史として山東巡撫に任命されます。成化6年（1470年）には山東で大飢饉が発生しましたが、翁世資は倉を開放し、50万石以上の食糧を民に分け与え、流民162万人の生活を安定させるという偉大な功績をあげました。

中央政界への再復帰と晩年

成化8年（1472年）、翁世資は戸部右侍郎として中央に召還され、戸部尚書の楊鼎を補佐します。成化13年（1477年）には薛遠の後任として総督倉場を、成化17年（1481年）2月には戸部尚書に昇進しました。成化19年（1483年）2月には太子少保の位を加えられ、引退します。同年6月に69歳で亡くなり、太子少傅の位を追贈されました。著書には『冰崖集』があります。

人物像

翁世資は、民を第一に考え、不正を恐れず直言する清廉な官僚でした。彼の行動は、当時の社会において模範となるものであり、後世に語り継がれるべき事績といえるでしょう。

参考文献

『明史』巻157 列伝第45
李清馥『閩中理学淵源考』巻52

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