楊鼎

明代の官僚、楊鼎の生涯

楊鼎（よう てい）は、明代中期に活躍した官僚で、字を宗器と称しました。永楽8年（1410年）に生まれ、成化21年6月15日（1485年7月26日）に76歳で生涯を閉じました。本貫は西安府咸寧県です。

立身出世

貧しい家に生まれた楊鼎は、幼い頃から学問に励みました。その努力が実り、宣徳4年（1429年）には郷試に合格し、首席である解元となりました。さらに正統4年（1439年）には進士に及第し、次席の榜眼に選ばれるという、非常に優秀な成績を収めました。その後、翰林院編修に任じられ、官僚としてのキャリアをスタートさせました。

正統12年（1447年）には、東閣に入り学業に専念しました。この頃から、軍備の重要性を認識し、三方の辺境への水運を開通させることを求める建言を行うなど、政治的な活動にも関与し始めました。正統14年（1449年）には、オイラトのエセン・ハーンが北京を攻撃するという危機に際し、景泰帝の命により監察御史の事務を代行し、兗州で兵士を募るなど、軍事的にも重要な役割を果たしました。

官僚としての活躍

景泰3年（1452年）には翰林院侍講に進み、中允を兼任しました。さらに景泰5年（1454年）9月には、戸部右侍郎に抜擢され、財政を担当する重要な役職を任されることになります。天順2年（1458年）には戸部左侍郎に進み、その手腕を発揮しました。しかし、陳汝言に誣告されるという不運に見舞われましたが、英宗はこれを退け、楊鼎の潔白が証明されました。

天順3年（1459年）冬には、皇帝陵祭祀において不謹慎な行動があったとして投獄されるという事件も起こりましたが、金銭を支払うことで杖刑を免れ、職務に復帰しました。また、この頃、英宗が宦官の牛玉に命じて、江南の折糧銀を内廷費として取り、その他の税物を武臣の俸給に充てようとした際には、楊鼎はこれに断固反対し、その結果、この計画は中止となりました。天順7年（1463年）には、戸部尚書の年富が病に倒れた際、英宗の命を受けて戸部の事務を代行しました。

成化4年（1468年）10月、楊鼎はついに戸部尚書に昇進しました。成化6年（1470年）には、陝西や漢中で大量の流民が発生していることから、監司を設置して対処するよう上疏しました。また、湖広で飢饉が頻発していることから、官庫に蓄えられた銀や布を米に換えて災害に備えるよう進言するなど、民政にも尽力しました。成化14年（1478年）2月には、太子少保の位を加えられ、その功績が認められました。

晩年

楊鼎は戸部において清廉な人物として知られていましたが、その一方で、物事に拘泥する性格が災いし、事務が停滞してしまうこともありました。成化15年（1479年）秋には、給事中や御史たちから、楊鼎には経国の才がないとして弾劾を受けることとなりました。二度辞任を願い出た結果、成化帝に受理され、官職を辞することとなりました。同年12月には、駅伝の馬を使って帰郷することを許され、月に米2石が支給されることになりました。成化21年（1485年）6月、76歳でこの世を去りました。死後、太子太保の位を追贈され、諡は荘敏と贈られました。著書には、『助費稿』20巻と『奏議』5巻があります。

子女

楊鼎には二人の息子がおり、長男の楊時暢は、成化14年（1478年）の進士で、翰林院侍講学士を務めました。次男の楊時敷は、挙人で兵部司務となりました。

参考文献

* 『明史』巻157 列伝第45


楊鼎は、明代の政治・経済に深く関わり、清廉な官僚としてその名を残しました。しかし、その一方で、融通の利かない性格が災いし、事務処理に遅滞を招くこともあったという、複雑な一面も持ち合わせていました。彼の生涯は、明代の官僚制度や社会情勢を理解する上で重要な手がかりとなるでしょう。

もう一度検索