耐糖能異常

耐糖能異常（Impaired Glucose Tolerance; IGT）とは

耐糖能異常（IGT）とは、75g経口ブドウ糖負荷試験（75gOGTT）の結果において、血糖値が正常型にも糖尿病型にも分類されない状態を指します。これは、しばしば「糖尿病予備群」とも呼ばれ、将来的に糖尿病を発症するリスクが高い状態と認識されています。具体的には、ブドウ糖負荷試験で血糖値が一定の範囲を超えて上昇するものの、糖尿病の診断基準には満たない状態を指します。

疫学

複数の研究から、耐糖能異常が健康に及ぼす影響が示唆されています。

DECODA study：この研究では、耐糖能異常を持つ人々は、正常な血糖値の人々に比べて死亡率が約2倍高いことが示されました。さらに、空腹時血糖値が正常であっても、食後の血糖値が高い状態（糖負荷後高血糖）では、心血管疾患のリスクが約3倍に上昇することも報告されています。
舟形町研究：この研究では、空腹時血糖値では正常群と耐糖能異常群との間で生存率に有意な差は見られませんでした。しかし、2時間後の血糖値に着目すると、正常群、耐糖能異常群、糖尿病群の間で生存率に差が認められました。この結果から、食後の高血糖が生命予後に関与している可能性が示唆されています。

これらの研究結果は、耐糖能異常が単に糖尿病のリスクを高めるだけでなく、直接的な健康リスクにも繋がる可能性を示しています。

治療

耐糖能異常は、適切な介入によって糖尿病への移行を防ぐことができる可能性があります。

STOP-NIDDM study：この研究では、αグルコシダーゼ阻害剤を使用することで、耐糖能異常から糖尿病への進行を遅らせたり、予防できる可能性が示されました。ただし、日本ではこの目的での保険適用はありません。
VICTORY study：日本で行われたこの研究では、ボグリボース（商品名：ベイスン®）が糖尿病の発症を予防する効果があることが確認されました。この結果を受け、日本ではボグリボースが糖尿病発症予防の目的で使用することが保険適用となりました。

これらの治療法は、耐糖能異常を持つ人々にとって、将来的な糖尿病の発症リスクを低減するための重要な選択肢となります。

その他の関連情報

インスリン抵抗性：耐糖能異常は、インスリン抵抗性が関与していることがあります。インスリン抵抗性とは、インスリンの効果が十分に発揮されない状態を指し、高血糖を引き起こす要因の一つです。

外部リンク

食後血糖値の管理に関するガイドライン（英語）：http://www.idf.org/webdata/docs/Japanese_GMPG_Final_280308.pdf

このガイドラインは、国際糖尿病連合（IDF）が作成したもので、食後血糖値の管理に関する最新の情報がまとめられています。

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