耿定向

耿定向（こう ていこう、1524年 - 1597年）は、中国明代の官僚であり、著名な学者でもありました。字は在倫、号は楚侗と称し、黄州府黄安県（現在の湖北省黄岡市一帯）の出身です。彼は、弟である耿定理、耿定力とともに「天台三耿」として知られています。また、焦竑や管志道といった、後世に名を残す学者を弟子に持っていました。

生涯

1556年（嘉靖35年）、耿定向は科挙の最難関である進士に合格し、官僚としてのキャリアをスタートさせました。御史に任命されると、吏部尚書であった呉鵬の婿、董份の不正を弾劾しました。1562年（嘉靖41年）には、黄安県の設置を上奏し、認められています。その後、南京に移り、学政を監督する役職に就きました。1567年（隆慶元年）には、大理寺右丞に任じられ、司法の分野でも活躍しました。

高拱が専横を振るった時期には、耿定向は左遷され、横州判官、後に衡州府推官に任命されました。しかし、万暦年間になると、福建巡撫に昇進し、その後、戸部尚書という要職にまで上り詰めました。官職を辞した後、耿定向は天台山に書院を設け、そこで生活を送ったため、「天台先生」と称されるようになりました。

耿定向は、弟たちとともに、思想家である李卓吾と交流がありました。李卓吾の著書『焚書』には、耿定向に宛てた書簡が収録されています。しかし、耿定向自身や弟子の管志道は、朱子学を奉じており、李卓吾が属した泰州学派に対しては批判的な立場を取っていたという指摘もあります。思想的には必ずしも李卓吾と同調していたわけではなかったようです。

著作

耿定向は、多くの著作を残しており、その一部は現在でも読むことができます。

『冰玉堂語録』
『天台文集』20巻
『碩輔宝鑑要覧』

これらの著作は、耿定向の思想や学問的な業績を知る上で貴重な資料となっています。

脚注

『明史』列伝第109
李贄『焚書　明代異端の書』（1969年、平凡社）
福建省地方志編纂委員会編『福建省志』（1992年）

これらの参考文献は、耿定向の生涯や業績について、より深く理解するための情報源となります。

耿定向は、明代の政治と文化に大きな影響を与えた人物であり、彼の業績は今日においても高く評価されています。官僚としてだけでなく、学者、教育者としての側面も持ち合わせていたことが、彼の偉大さを示す要因と言えるでしょう。

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