聖ゲオルギウス (マンテーニャ)

『聖ゲオルギウス』は、アンドレア・マンテーニャによって1460年頃に制作されたテンペラ画であり、66×32cmの板に描かれています。現在はヴェネツィアのアカデミア美術館に所蔵されています。

この絵画は、鎧を身にまとい、直立する聖ゲオルギウスの姿を描いています。彼は竜を退治するために使用した槍の残骸を持っており、その槍の先端は竜の顎に突き刺さったまま、竜は聖人の足元に横たわっています。画面の左右には大理石の枠が描かれていますが、聖ゲオルギウスの肘は左側の枠よりも、竜の頭部は右側の枠よりもそれぞれはみ出しており、まるで絵画が現実空間に飛び出しているかのような、だまし絵的な効果を生み出しています。このようなトロンプルイユ（だまし絵）の技法は、マンテーニャがパドヴァ時代（1459年まで）からマントヴァ時代（1460年から）へと移り変わる時期の作品に特によく見られる特徴です。

画面上部に描かれた花輪は、スクァルチョーネ派に典型的なモチーフであり、マンテーニャが若い頃にパドヴァのフランチェスコ・スクァルチョーネの工房で過ごした時期の影響を示唆しています。背景の右手には、丘の上に築かれた城壁に囲まれた町へと続く道が描かれています。

聖ゲオルギウスは、精緻な輪郭線で縁取られ、均一に輝く光の中で、完璧な遠近法を用いて描かれています。金属的な光輪、純粋さを感じさせる顔立ち、競技試合用の鎧、腰に当てられた左手など、細部に至るまで象嵌細工のように丁寧に描かれています。この精緻な描写によって、聖ゲオルギウスは単なるキリスト教の敬虔な象徴としてではなく、当時の新しい憧憬であった古代の英雄のように、記念碑的な存在として表現されています。マンテーニャは、聖ゲオルギウスを、宗教的な意味合いを超えた、英雄的な存在として、より人間的な視点で描いたと言えるでしょう。この作品は、マンテーニャの卓越した描写力と、古典的な要素と新しい芸術的表現を融合させる能力を示しています。

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