聖変化

聖変化（せいへんか）とは

聖変化（せいへんか）は、カトリック教会におけるミサや、正教会の聖体礼儀において、パンとぶどう酒がイエス・キリストの体（聖体）と血（聖体血）に変化するという教義を指します。ラテン語では「transubstantiatio」、ギリシア語では「μετουσίωσις」、英語では「transubstantiation」と表記されます。

カトリック教会の聖変化

カトリック教会では、ミサにおいて司教や司祭がパンとぶどう酒を聖別する際に、パンの全実体がキリストの体に、ぶどう酒の全実体がキリストの血に変化すると考えられています。この変化は「実体変化」と呼ばれます。この教義は、福音書に記されたイエス・キリストの言葉に基づくとされています。

カトリック教会は、この聖変化を「パンとぶどう酒の形（偶性）を保ちながら、その実体はキリストの体と血に変化する」と解釈しています。ここでいう「実体」とは、キリストの人性（体、血、霊魂）と神性のすべてを指します。この定義は、第4ラテラン公会議（1215年）とトリエント公会議（1545-1563年）で公式に認められました。

カトリック教会はアリストテレス哲学を用いて聖変化を説明します。アリストテレス哲学では、事物は「実体」と「偶性」から構成されるとされます。「実体」は概念的なものであり、「偶性」（大きさ、色、形など）を伴って初めて存在すると考えます。聖変化後も、パンとぶどう酒の外観や科学的な組成（偶性）は変化しないものの、その「実体」はキリストの体と血に変化していると考えます。この「実体」は概念であるため、不可視であり、不可触であるとされます。この説は「実体変化説」と呼ばれ、プロテスタント側からは「化体説」と呼ばれることもあります。

他教派の批判

宗教改革以降、プロテスタント諸派は、パンとぶどう酒が実際にキリストの体と血に変化するのではなく、単なる象徴に過ぎないと考えるようになりました。しかし、カトリック教会はトリエント公会議で改めて実体変化の教義を明確にし、現在に至っています。

この実体変化の概念に対する見解の相違は、カトリック神学と他教派の神学における聖餐論の違いを象徴しています。

トリエント公会議の宣言

トリエント公会議では、聖変化について以下のように宣言しています。

聖別されたパンとぶどう酒には、真に、現実に、実体的に、イエス・キリストが現存している。
キリストは天においては父の右に座しているが、信仰によって、秘跡的に他の多くの場所にも現存している。
聖体の秘跡には、キリストの体と血がその霊魂と神性とともに、すなわちキリスト全体が含まれている。
パンとぶどう酒の聖別によって、パンの実体はキリストの体の実体に、ぶどう酒の実体はキリストの血の実体に変化する。この変化をカトリック教会は「実体変化」と呼ぶ。

正教会の聖変化

正教会においても、聖体礼儀においてパンとぶどう酒がキリストの体と血に変化するという教義がありますが、カトリック教会のようにアリストテレス哲学に基づいた詳細な説明は行われていません。正教会では、この変化は神秘的な出来事として理解されています。

まとめ

聖変化は、キリスト教の中でも特にカトリック教会と正教会において重要な教義です。パンとぶどう酒がキリストの体と血に変化するという信仰は、聖餐（聖体拝領）の核心であり、キリストと信者の結びつきを象徴するものと考えられています。

参考文献

日本カトリック司教協議会『カトリック教会の教え』カトリック中央協議会、2003年。ISBN 978-4-87750-106-8。
日本カトリック司教協議会、常任司教委員会『カトリック教会のカテキズム要約』カトリック中央協議会、第8刷、2014年2月10日。350頁。ISBN 978-4-87750-153-2。
共同訳聖書実行委員会　日本聖書協会『聖書: 新共同訳』日本聖書協会、1998年1月。ISBN 978-4-8202-1205-8。NCID BA37101585。

関連項目

聖化（英語版：consecration）
ミサ
トリエント公会議
聖体の奇跡
聖餐

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