聖家族と幼児洗礼者聖ヨハネ (コレッジョ、オルレアン美術館)

『聖家族と幼児洗礼者聖ヨハネ』は、イタリア・ルネサンス期の画家コレッジョが1518年から1519年頃に制作した油彩画です。この作品は、聖家族を主題とし、聖母マリア、幼子イエス、そして幼児の洗礼者ヨハネが描かれています。

鬱蒼とした植物を背景に、幼いイエスは、洗礼者ヨハネが差し出す十字架を受け取ろうとしています。聖母マリアは、そのイエスを支え、傍らでは聖ヨセフが見守っています。ヨハネが持つ十字架は、細い棒にくくりつけられた脆そうなもので、彼の象徴的な持ち物です。この十字架を受け取る行為は、イエスが未来に待ち受ける受難を受け入れることを暗示しています。このモチーフは、コレッジョの初期の聖母画にも見られ、彼はこの作品で再び原点回帰しています。

この絵画は、コレッジョの同時期の作品である『聖ヒエロニムスのいる聖家族』と非常に似ています。両作品は、主題、構図、半身像の描写という点で類似しているだけでなく、聖母の像には同じカルトン（原寸大下絵）が使用されています。また、どちらも依頼主の個人的な信仰心のために制作されたと考えられています。ただし、『聖ヒエロニムスのいる聖家族』では、洗礼者ヨハネの代わりに聖ヒエロニムスが描かれています。

作品の帰属については、古い目録ではコレッジョとの関連性が示唆されていましたが、19世紀には忘れられ、ロンバルディア派の無名画家の作品として扱われていました。しかし、絵画がオルレアン美術館に収蔵された後、1921年に美術史家ロベルト・ロンギによってコレッジョの作品と再評価されました。ロンギは、この作品をベネディクト会サン・パウロ修道院の居間の壁画装飾に関連付けました。

絵画の初期の来歴は不明ですが、裏側にイングランド国王チャールズ1世の紋章があるため、彼のコレクションの一部であったと考えられています。しかし、1639年の目録にはこの作品が見当たらないため、チャールズ1世が皇太子時代にスペインを訪問した際に贈られた可能性が指摘されています。この時、チャールズ1世は結婚交渉には失敗しましたが、フェリペ4世からティツィアーノの作品などを贈られています。この絵画が確実に記録されるのは、フランス国王ルイ14世の時代まで遡ります。1683年、宮廷画家シャルル・ルブランは、この作品を「コレッジョの作風」と記録しました。その後、1695年にヴェルサイユ宮殿で記録され、1709年から1710年に作成された目録ではコレッジョの作品と推定され、1754年にニコラ・ベルナール・レピシエはコレッジョの作品として新しい目録に記載しました。19世紀後半には、オルレアン美術館に収蔵され、現在に至っています。

この作品は、コレッジョの円熟期の作品であり、ルネサンス美術の重要な例として高く評価されています。聖家族の愛情に満ちた描写と、洗礼者ヨハネとの出会いを描いたこの作品は、見る人に深い感動を与えます。

もう一度検索