聖ヒエロニムスのいる聖家族

コレッジョ『聖ヒエロニムスのいる聖家族』について

『聖ヒエロニムスのいる聖家族』（伊: Sacra Famiglia con San Girolamo, 英: The Holy Family with Saint Jerome）は、イタリア・ルネサンス期の画家コレッジョが1519年頃に制作した油彩画です。パルマ派の画家であるコレッジョが、故郷を離れてパルマに移った直後の比較的初期の作品とされています。

作品の詳細

この作品では、聖母マリアが幼いキリストを抱き、そのキリストが年老いた人物を祝福しています。この年老いた人物は、聖ヨセフと共に描かれていることから、一般的に聖ヒエロニムスであると考えられています。しかし、聖ヒエロニムスを明確に示す特徴は必ずしも描かれていません。幼いキリストの小さな手と、聖ヒエロニムスの大きな手、また、キリストの金色の巻き毛と聖ヒエロニムスの白髪が対比的に描かれています。

コレッジョは、過去の図像や構想を再利用し、この作品を制作しました。幼いキリストの姿は、プラド美術館所蔵の『聖母子と幼児聖ヨハネ』と共通しています。特に、聖母の姿は、かつてチャールズ1世のコレクションにあったオルレアン美術館の『聖家族と幼児洗礼者聖ヨハネ』に描かれた聖母像と非常に酷似しています。ただし、オルレアン美術館の作品と比較すると、本作品は筆遣いがより自由であり、風景の扱いと形態描写の正確さがやや低下していることから、後から制作されたと考えられます。

人物間の親密さ、特に聖母子の柔らかく彫刻的な人物像は、聖家族を繰り返し描いたラファエロ・サンツィオの作品を彷彿とさせます。明確な証拠はありませんが、コレッジョは1518年から1519年頃にローマを訪れ、ラファエロの作品を研究したと考えられています。

来歴

本作品の最も古い記録は、1627年1月23日に作成されたマントヴァ公爵フェルディナンド・ゴンザーガの死後の目録です。この目録には「板の上に描かれた、子供を腕に抱えた聖母、聖ヒエロニムスと聖ヨセフ、彫刻が施された金色の額縁」と記載されていますが、作者についての言及はありません。しかし、1627年から1628年にかけて、チャールズ1世の代理としてゴンザーガ家の絵画コレクションの売却交渉にあたった美術商ダニエル・ニースは、この作品を「聖ヨセフの頭部を持つコレッジョの聖母」と述べています。コレッジョの署名はありませんが、ダニエル・ニースはコレッジョの作品と認識していました。ただし、ニースが言及した作品がオルレアン美術館の作品である可能性も残されています。

ゴンザーガ家のコレクションに加わった時期は不明ですが、コレッジョの作品に高い関心を示していたヴィンチェンツォ1世・ゴンザーガの時代ではないかと推測されています。チャールズ1世が所有した印が絵画の裏側にあるものの、チャールズ1世のコレクションを管理したアブラハム・ファン・デル・ドアトのインベントリには記録がありません。絵画はグリニッジ宮殿にあり、チャールズ1世処刑後の1649年11月の大規模売却では、「コレッジョの聖母、キリスト、聖ヒエロニムス」として50ポンドと評価されました。一度は売却された絵画はその後回収され、1666年にはホワイトホールの王の私室で記録されました。ロイヤル・コレクションの目録では作者が記載されていませんでしたが、1870年にコレッジョの作品とされ、広く認められるようになりました。

作品の影響

パルマ派の画家であるパルミジャニーノは、この作品から影響を受けています。パルミジャニーノは、ロンドンのナショナル・ギャラリーにある『聖カタリナの神秘の結婚』やウフィツィ美術館の『聖ゼカリアの聖母』において、画面端に年老いた聖人の横顔を配置するという、この作品のアイデアを用いています。

現在の所蔵

現在、この作品はロンドンのハンプトン・コート宮殿のロイヤル・コレクションに所蔵されています。

参考文献

ルチア・フォルナーリ・スキアンキ『コレッジョ イタリア・ルネサンスの巨匠たち28』森田義之訳、東京書籍（1995年）

外部リンク

ロイヤル・コレクション・トラスト公式サイト - コレッジョ『聖ヒエロニムスのいる聖家族』

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