聖性

聖性 (Holiness)

聖性とは、キリスト教、特にカトリック教会において中心的な概念の一つであり、信仰生活における究極的な到達点と位置づけられています。これは単なる道徳的な完全さを超え、イエス・キリストの模範に従い、その姿に近づくこと、すなわち「聖人」となることを意味します。全てのキリスト者が目指すべき目標であり、神の助けを得ながら生涯をかけて追求される道です。

キリストに似る生き方

聖性を追求するとは、個人の内面、すなわち思考や感情、そして言葉や振る舞いといった外的な行動の全てにおいて、キリストの教えと生き様に深く根差すことを意味します。これは一朝一夕に成し遂げられるものではなく、神の恩寵に頼りながら、生涯にわたる絶え間ない努力と成長の過程です。それは、自己中心性から離れ、神と隣人への愛に突き動かされる存在へと変容していくプロセスです。

愛徳：聖性の核心

この聖性の最も顕著な表れとされるのが「愛徳」です。愛徳とは、すべての存在の源である神を何にも勝って愛し、そして自分自身のように隣人を愛するという、イエス・キリストが説いた二重の愛の掟の実践です。キリスト教の伝統において、この愛徳こそがあらゆる徳の基盤であり、頂点であると考えられています。聖性を目指す道のりは、まさにこの愛徳を深め、日常生活の中で実践していく過程と言えるでしょう。

他の徳との関連

愛徳は孤立した徳ではありません。それは謙遜、正義、勤勉、純潔、従順、喜びといった他の様々なキリスト教的な徳とも密接に関連し、それらを鼓舞し、方向づける力となります。例えば、隣人への愛は、他者に対する公平で正義の行動を促し、神への愛は困難な状況における従順の精神を育むといった具合です。聖性の追求は、愛徳を中心に据えつつ、これらの諸徳をバランス良く育んでいく歩みでもあります。

普遍的な招きと教会の目的

聖性は、特定の修道者や聖職者だけのものではありません。第２バチカン公会議がその重要性を改めて強調したように、それは洗礼を受けたすべてのキリスト者が等しく招かれている普遍的な目標です。教会の教えによれば、信徒はそれぞれの置かれた状況や役割の中で、この聖性への招きに応えるよう求められています。家庭生活、職業、社会奉仕など、日常のあらゆる場面が聖性を磨く場となり得ます。

また、バチカン市国の日刊紙『ロッセルバトーレ・ロマーノ』に掲載された記事の中で、聖座の事実上の声であるバチカン市国で発行される日刊紙『ロッセルバトーレ・ロマーノ』に掲載された記事の中で、列聖省前長官であったアンジェロ・アマート枢機卿は、聖性が個人の精神的な目標であるだけでなく、教会自身の存在目的であり、地上における人類の究極的な到達点であると述べています。教会は、その構成員が聖性を追求し、それを証しすることで、世に神の愛と真理を示す共同体としての役割を果たすのです。

神の助けと天国での完成

聖性への道のりは、時に自己との内的な葛藤や世俗的な価値観との間の「戦い」に例えられることもあります。しかし、この歩みは人間の力だけで成し遂げられるものではありません。キリスト者は、祈り、秘跡への参与、聖書の朗読などを通して与えられる神の恵み、すなわち助けに頼りながら歩みを進めます。そして、この地上での生涯を通じて追求された聖性は、死を迎えた後、神との完全な一致に至る天国において最終的に完成されると考えられています。

聖性に関する文献

聖性に関する理解は、カトリック教会の重要な教義文献である第２バチカン公会議の『教会憲章』をはじめ、現代社会における聖性の呼びかけについて論じた教皇フランシスコの使徒的勧告「GAUDETE ET EXSULTATE」、あるいは、日常の営みの中に聖性を見出す可能性を示唆する聖ホセマリアの著作など、多くの文献で深められています。これらの文献は、聖性が単なる抽象的な理想ではなく、具体的な信仰生活の中で実現されるべき現実的な目標であることを示しています。

聖人となることは、欠点のない完璧な人間になることではなく、神への信頼と愛において完全に自身を捧げることです。それは、キリストの愛に自らを開き、その愛を通して世に仕える生き方を選択することです。聖性の追求は、キリスト者にとって自己実現の最高峰であり、神との親しい交わりへと導く祝福された道なのです。

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