聖書の無誤性

聖書の無誤性

聖書の無誤性とは、聖書が原典において完全に誤りがない神の言葉であるという信念を指します。この教理によると、聖書は歴史や科学を含む全ての分野において完全に正確であると主張され、誤りが一切存在しないとされています。無誤性は信仰と生活に関する正確な規範を提供するものであり、無謬説と混同されることがありますが、両者は異なる概念です。

無誤性に至る背景

多くのキリスト教の教派は、聖書は神の霊感を受けた著者によって書かれたと信じています。この信念は、第二テモテ3:16に基づいています。クリスチャンの中には、無謬性を教える立場を支持し、聖書が信仰とクリスチャン生活において信頼できる指針であるとみなします。しかし、無謬性を主張する教派の中には、歴史や科学における誤りを認める立場を取るものもあります。

無誤性を信じるクリスチャンは、聖書が正確であり、科学や歴史に関しても真実を教えると確信しています。信仰の基盤を示す例として、使徒パウロのガラテヤ3:16が挙げられます。この箇所では、神が特定の予言的な言葉を用いてイエス・キリストの到来を予見しているため、聖書の一言一句が正確であるとされています。また、イエス・キリストは「一点一画」にわたって聖書の権威を強調しています（マタイ5:18）。これは、聖書が神の言葉である以上、完全であり誤りがないとの説明につながります。

無誤性を支持する主張

神が完全であることから、聖書もまた誤りのないものであると唱えられています。無誤性は、神がそれぞれの聖書記者の人間的要素を生かしつつ、誤りのない神の啓示を伝えたと考えられます。これに対し、保守的な学者たちは、翻訳過程における人為的な誤りは可能性があるにせよ、66巻にわたる聖書のテキストは神の摂理によって守られ、純粋に保存されてきたと主張します。さらに、GeislerとNixによると、聖書の無誤性は歴史的正確さやキリスト教会の伝統、そしてクリスチャンたちの個人的な体験によって証明されます。

各教派の立場

カトリック教会

カトリック教会は、公会議や教皇の宣言が無謬であると信じています。1870年に確立された教皇無謬説は、この信仰と道徳に関する宣言の際の誤りを否定します。教皇ピウス12世は、教皇の無謬性が信仰と道徳の問題に限られることを強調しました。

正教会

正教会では聖書の無誤性についての議論はあまり行われず、ギリシャ語版聖書や初期教会の教えを神聖視し、聖書の解釈は公会議によって定められています。

プロテスタント

プロテスタントの伝統では、聖書が歴史や科学に関する詳細についても誤りなく記録しているとの信念が浸透しています。また、1978年に行われたシカゴ声明は聖書の無誤性についてまとめられ、多くのプロテスタント教派がこれを受け入れました。

無誤性の論争

無誤性に関する論争には、絶対無誤説、十全無誤説、限定無誤説の三つの立場があります。特に日本の福音派では、十全無誤説が主に採用されています。これらの論争には批判も存在し、特に第二テモテ3:16の解釈や、循環論法での批判が指摘されています。これに対抗する意見もあり、使徒ペテロがパウロの書簡に権威を認めていることに触れ、これらの教義は誤りがないことを証明する根拠として用いられます。

結論

聖書の無誤性に関する議論は、キリスト教の信仰に深く根差しており、様々な解釈や立場が存在します。教派による相違がある一方で、聖書が信仰において中心的な役割を果たすことは共通の理解です。そのため、無誤性についての理解を深めることは、クリスチャンにとって自身の信仰をより確かなものとするために重要であるといえるでしょう。

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