聖歌 (総合版)
『聖歌』総合版は、日本教会音楽研究会と聖歌の友社によって編集・発行された聖歌集です。この聖歌集は、19世紀末にバックストン師の指導により発行された「救の歌」から始まる日本の福音聖歌史100年の集大成として位置づけられています。40年以上の歳月をかけて、日本の福音聖歌史を総括し、世界中の名聖歌をバランス良く集めた全818曲を収録しています。
この聖歌集は、2002年に発行されました。構成は、「旧聖歌」から638曲、そして「青年聖歌」「こどもせいか」「リバイバル聖歌」などからの新曲180曲で成り立っています。本書は、信徒が聖書の教え（コロサイ3:15,16など）に従い、社会の変化による多様性を尊重しつつ、時代や教派を超えて一致して歌い、信仰を深めるための共通聖歌となることを目指しています。そのため、永続的な出版を必要とし、他の団体との協力関係を築きながら出版活動が行われています。
『聖歌』総合版は通称であり、正式な書名は『聖歌』です。副題として「総合版」が付けられています。『聖歌』という書名は、1958年に中田羽後氏が編集したものが、1927年発行の由木氏の著書が廃刊となっていたため使用可能となり、同様に2002年発行の和田健治氏編集のものは、1958年の中田氏のものが廃刊となっていたため使用できました。
1958年に、日本の教会音楽史における大家である中田羽後氏（当時62歳）が編集した『聖歌』が出版されました。その2年後から、和田健治氏（当時26歳）が中田羽後氏に師事し、作品を発表するようになりました。中田氏は、出版された聖歌集や、詩人・野上彰氏との共同制作による校歌、カンタータ「主の祈り」などを高く評価し、自身が作曲を予定していた多くの詞を和田氏に託しました。
1968年、中田羽後氏は狭心症で入院し、視力や体力の衰えを感じるようになりました。退院後の1969年1月、和田健治氏とともに月刊『聖歌の友』を創刊し、主筆を務めました。編集・発行は和田健治氏が行い、23年間で195号まで発行されました。和田氏は、『聖歌』普及活動全体を主宰し、改訂に必要な資料も収集しました。また、中田氏の生涯に関する資料は後継者である和田氏に託され、「聖歌の友」刊行の屋号は「聖歌の友社」と称されるようになりました。その後、出版部門は「聖歌の友社」として活動しています（2003年に聖歌の友社有限会社設立）。
1971年、中田羽後氏は心筋梗塞で入院し、医師から活動を止められました。その際、中田氏は関係者立ち会いのもと、和田氏に対し「今後、中田著作物全体を聖歌の友社から順次、未発表のものから出版してもらいたい。それらに関する判断や責任はすべて和田健治に託す」と伝えました（「聖歌の友」1973年3月号参照）。さらに、遺言書には「『聖歌の友』の主筆は和田健治に移る。従って、聖歌の友社出版の諸出版物は、今まで通り和田健治が所有する」と記されました。これらの約束に基づき、和田氏は中田氏の遺志を継ぎ、研究活動を現在まで続けています。
1971年以降、教会音楽全国講習会や各地の講習会が毎年開催され、『聖歌』を中心とした教会音楽の理論と実技の充実が図られました。1972年には、『聖歌』改訂の試用版を兼ねた『青年聖歌』が中田氏と和田氏の共編により出版されました。1974年、中田羽後氏が急逝しましたが、遺言書には和田健治氏に関する前述の約束が明記されており、和田氏は中田氏の研究を引き継ぐこととなりました。
2001年、『新聖歌』が日本教会音楽研究会に相談なしに編集・発行され、同時に『聖歌』が廃刊となりました。これに対し、同研究会に全国的な要請が起こり、研究会はアンケートなどを通して調査・検討を行いました。その結果、日本の教会の成長には『聖歌』が不可欠であるという信念のもと、多くの協力者を得て、2002年に聖歌の友社から、和田健治氏が新たに編集した『聖歌』総合版を出版しました。しかしその後、販売妨害が発生しました。和田健治氏（原告）は、妨害差し止め請求の裁判を起こし、判決により「妨害の理由とされた『聖歌』総合版の書名、記譜のスタイル、編集著作権などが違法なものではない」と認められ、問題は解決しました。
本書の主な特徴は以下の通りです。
初の総合版であり、永続出版を目指す共通聖歌である。
旧「聖歌」から638曲、「青年聖歌」などから180曲を収録。古今の多様な名聖歌を網羅している。
「讃美歌」は文語体であるが、「聖歌」総合版は口語体が164曲収録されている（旧「聖歌」は69曲）。
日本人の作詞は149曲（旧「聖歌」は70曲）、作曲は85曲（旧「聖歌」は9曲）収録。
霊の歌を中心に約50％の曲にコードネーム付き楽譜を付与。
ピアノ伴奏譜スタイルが多い。記譜法は世界共通の標準。
生涯学習教本を兼ねた詳細な解説を収録。
付録として、日本福音聖歌史100年を掲載。
この聖歌集には、ビリー・グラハム大会、聖書信仰運動、日本伝道会議、聖歌の友での聖歌募集によって生まれた聖歌も含まれています。また、韓国の会衆賛頌歌研究委員会発行の「会衆賛頌歌」45番には、「聖歌」総合版199番（和田健治作曲）が選曲されています。
内容構成
第1部「詩篇歌」：16世紀のジェネバ詩篇歌を中心に、歌いやすい日本語訳で24曲収録。旧「聖歌」では交読文であったものが、現行版では詩篇歌として掲載。
第2部「賛美」：旧「聖歌」から299曲、他の歌集から60曲、計359曲を収録。荘重な曲だけでなく、みことば短歌や礼拝式用レスポンス、定礎式、結婚式など様々な場面で使用される聖歌を掲載。
第3部「霊の歌」：旧「聖歌」から281曲、他の歌集から35曲、計316曲を収録。19世紀から20世紀にかけてのリバイバルで歌われたゴスペルソングや、現代的な聖歌、季節に因んだ聖歌などを掲載。
第4部「子供聖歌」：旧「聖歌」から22曲、「こどもせいか」から28曲、計50曲を収録。福音や救いに関する曲が多く、子供祝福式や礼拝など、様々な場面で用いられる聖歌を掲載。
第5部「合唱聖歌」：旧「聖歌」から12曲、他の歌集から57曲、計69曲を収録。聖歌隊用だけでなく、独唱や重唱用の聖歌も含まれ、様々なレベルに対応した曲を掲載。
参考文献
『聖歌（総合版）』、日本教会音楽研究会、2002年
関連項目
賛美歌
聖歌 (日本福音連盟)
日本教会音楽研究会
外部リンク
日本教会音楽研究会／聖歌の友社
この聖歌集は、2002年に発行されました。構成は、「旧聖歌」から638曲、そして「青年聖歌」「こどもせいか」「リバイバル聖歌」などからの新曲180曲で成り立っています。本書は、信徒が聖書の教え（コロサイ3:15,16など）に従い、社会の変化による多様性を尊重しつつ、時代や教派を超えて一致して歌い、信仰を深めるための共通聖歌となることを目指しています。そのため、永続的な出版を必要とし、他の団体との協力関係を築きながら出版活動が行われています。
『聖歌』総合版は通称であり、正式な書名は『聖歌』です。副題として「総合版」が付けられています。『聖歌』という書名は、1958年に中田羽後氏が編集したものが、1927年発行の由木氏の著書が廃刊となっていたため使用可能となり、同様に2002年発行の和田健治氏編集のものは、1958年の中田氏のものが廃刊となっていたため使用できました。
1958年に、日本の教会音楽史における大家である中田羽後氏（当時62歳）が編集した『聖歌』が出版されました。その2年後から、和田健治氏（当時26歳）が中田羽後氏に師事し、作品を発表するようになりました。中田氏は、出版された聖歌集や、詩人・野上彰氏との共同制作による校歌、カンタータ「主の祈り」などを高く評価し、自身が作曲を予定していた多くの詞を和田氏に託しました。
1968年、中田羽後氏は狭心症で入院し、視力や体力の衰えを感じるようになりました。退院後の1969年1月、和田健治氏とともに月刊『聖歌の友』を創刊し、主筆を務めました。編集・発行は和田健治氏が行い、23年間で195号まで発行されました。和田氏は、『聖歌』普及活動全体を主宰し、改訂に必要な資料も収集しました。また、中田氏の生涯に関する資料は後継者である和田氏に託され、「聖歌の友」刊行の屋号は「聖歌の友社」と称されるようになりました。その後、出版部門は「聖歌の友社」として活動しています（2003年に聖歌の友社有限会社設立）。
1971年、中田羽後氏は心筋梗塞で入院し、医師から活動を止められました。その際、中田氏は関係者立ち会いのもと、和田氏に対し「今後、中田著作物全体を聖歌の友社から順次、未発表のものから出版してもらいたい。それらに関する判断や責任はすべて和田健治に託す」と伝えました（「聖歌の友」1973年3月号参照）。さらに、遺言書には「『聖歌の友』の主筆は和田健治に移る。従って、聖歌の友社出版の諸出版物は、今まで通り和田健治が所有する」と記されました。これらの約束に基づき、和田氏は中田氏の遺志を継ぎ、研究活動を現在まで続けています。
1971年以降、教会音楽全国講習会や各地の講習会が毎年開催され、『聖歌』を中心とした教会音楽の理論と実技の充実が図られました。1972年には、『聖歌』改訂の試用版を兼ねた『青年聖歌』が中田氏と和田氏の共編により出版されました。1974年、中田羽後氏が急逝しましたが、遺言書には和田健治氏に関する前述の約束が明記されており、和田氏は中田氏の研究を引き継ぐこととなりました。
2001年、『新聖歌』が日本教会音楽研究会に相談なしに編集・発行され、同時に『聖歌』が廃刊となりました。これに対し、同研究会に全国的な要請が起こり、研究会はアンケートなどを通して調査・検討を行いました。その結果、日本の教会の成長には『聖歌』が不可欠であるという信念のもと、多くの協力者を得て、2002年に聖歌の友社から、和田健治氏が新たに編集した『聖歌』総合版を出版しました。しかしその後、販売妨害が発生しました。和田健治氏（原告）は、妨害差し止め請求の裁判を起こし、判決により「妨害の理由とされた『聖歌』総合版の書名、記譜のスタイル、編集著作権などが違法なものではない」と認められ、問題は解決しました。
本書の主な特徴は以下の通りです。
初の総合版であり、永続出版を目指す共通聖歌である。
旧「聖歌」から638曲、「青年聖歌」などから180曲を収録。古今の多様な名聖歌を網羅している。
「讃美歌」は文語体であるが、「聖歌」総合版は口語体が164曲収録されている（旧「聖歌」は69曲）。
日本人の作詞は149曲（旧「聖歌」は70曲）、作曲は85曲（旧「聖歌」は9曲）収録。
霊の歌を中心に約50％の曲にコードネーム付き楽譜を付与。
ピアノ伴奏譜スタイルが多い。記譜法は世界共通の標準。
生涯学習教本を兼ねた詳細な解説を収録。
付録として、日本福音聖歌史100年を掲載。
この聖歌集には、ビリー・グラハム大会、聖書信仰運動、日本伝道会議、聖歌の友での聖歌募集によって生まれた聖歌も含まれています。また、韓国の会衆賛頌歌研究委員会発行の「会衆賛頌歌」45番には、「聖歌」総合版199番（和田健治作曲）が選曲されています。
内容構成
第1部「詩篇歌」：16世紀のジェネバ詩篇歌を中心に、歌いやすい日本語訳で24曲収録。旧「聖歌」では交読文であったものが、現行版では詩篇歌として掲載。
第2部「賛美」：旧「聖歌」から299曲、他の歌集から60曲、計359曲を収録。荘重な曲だけでなく、みことば短歌や礼拝式用レスポンス、定礎式、結婚式など様々な場面で使用される聖歌を掲載。
第3部「霊の歌」：旧「聖歌」から281曲、他の歌集から35曲、計316曲を収録。19世紀から20世紀にかけてのリバイバルで歌われたゴスペルソングや、現代的な聖歌、季節に因んだ聖歌などを掲載。
第4部「子供聖歌」：旧「聖歌」から22曲、「こどもせいか」から28曲、計50曲を収録。福音や救いに関する曲が多く、子供祝福式や礼拝など、様々な場面で用いられる聖歌を掲載。
第5部「合唱聖歌」：旧「聖歌」から12曲、他の歌集から57曲、計69曲を収録。聖歌隊用だけでなく、独唱や重唱用の聖歌も含まれ、様々なレベルに対応した曲を掲載。
参考文献
『聖歌（総合版）』、日本教会音楽研究会、2002年
関連項目
賛美歌
聖歌 (日本福音連盟)
日本教会音楽研究会
外部リンク
日本教会音楽研究会／聖歌の友社
もう一度検索
【記事の利用について】
タイトルと記事文章は、記事のあるページにリンクを張っていただければ、無料で利用できます。
※画像は、利用できませんのでご注意ください。
【リンクついて】
リンクフリーです。