聖母の被昇天

聖母の被昇天

聖母の被昇天（せいぼのひしょうてん）、英語でいうところのAssumption of Maryは、聖母マリアが人生の終わりに肉体と霊魂を伴って天国に引き上げられたという信仰を指します。この概念はカトリック教会における祝日であり、毎年8月15日に祝われています。この教義は、1950年に当時のローマ教皇ピオ12世によって正式に認められました。

この祝日の背景には、キリストの昇天と対照的に、聖母マリアが聖霊の力によって受動的に天に引き上げられるという考え方があります。そのため、「被昇天」という言葉が用いられています。

歴史的背景

この信仰の起源は、正教会における生神女就寝にさかのぼります。生神女就寝は、6世紀ごろに西方にも伝わりましたが、その後、西方において独自の発展を遂げました。最初の記録はトゥールのグレゴリウスによるもので、当初は1月18日に祝われていましたが、後に皇帝マウリキウスの時代に現在の8月15日に固定されました。

中世を通じて、聖母の被昇天は特にスペイン、イタリア、ドイツなどの地域で崇敬されるようになり、バロック期以降、信仰がさらに盛んになりました。その結果、カトリック教会の教義として正式に承認されるに至ります。カトリック信徒の多い国々、特に南ヨーロッパや中南米では、8月15日が祝日として認識されています。また、日本のカトリック教会でもこの日を祝う祭日となっています。

聖母マリアの原罪について

カトリックにおいて、マリアはその母アンナの胎内に宿った瞬間から「アダムの罪」（原罪）から守られていたという信仰があります。この概念は無原罪の御宿りを意味し、12月8日に祝われる無原罪の聖マリアの祭日にも関連しています。この教義は1854年に定められました。

正教会における見解

正教会でも8月15日は生神女就寝祭として祝われます。しかし、そこではマリアの死亡を「就寝」または「眠りにつく」と捉え、肉体が直接天に引き上げられたわけではないと考えられています。正教会によれば、マリアの魂は天に昇り、来世の栄光の体を受けるとされます。このため、マリアの信仰は教義として信じるものではなく、私的啓示として理解されることが一般的です。

芸術と図像

聖母の被昇天に関連する画像は、マリアを成人の姿で描くことが多いのに対し、生神女就寝では、キリストが眠るマリアの遺体の傍に立ち、その幼子の形の魂を抱いている場面が多く見られます。しかし、末期にはマリアが天に現れる場面では、成人姿のマリアが描かれることもあります。

8月15日に起きた主な出来事

聖母の被昇天の祝日にはいくつかの重要な出来事があり、1549年にはフランシスコ・ザビエルが日本に到着しました。また、1576年にはイエズス会により京都に聖母被昇天教会が建設され、その献堂ミサが執り行われました。

このように、聖母の被昇天はカトリックにとって深い信仰の象徴であり、歴史的にもさまざまな重要な出来事と結びついています。

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