聖母子と幼児聖ヨハネ (コレッジョ、プラド美術館)

『聖母子と幼児聖ヨハネ』は、イタリアのルネサンス期に活躍した画家コレッジョが、1515年から1517年頃に制作した油彩画です。この作品は、コレッジョの初期の作品であり、レオナルド・ダ・ヴィンチからの影響が最も顕著に表れているものとして知られています。

絵画は、豊かな植物に囲まれた暗い洞窟を背景に、聖母マリアが幼いイエス・キリストを膝に抱き、洗礼者聖ヨハネを優しく抱き寄せている様子を描いています。コレッジョは、キリストと洗礼者ヨハネの最初の出会いの瞬間を捉え、聖母がヨハネに息子を紹介しているかのような場面を描き出しています。聖ヨハネは小さな十字架を胸に抱き、それを受け入れる準備ができているキリストの姿には、二重の感情と神学的な意味が込められています。

幼いキリストの両腕は、まるでヨハネとの出会いを喜び、抱きしめようとしているかのように見えますが、その身振りは同時に、観る者に磔刑を想起させることを意図しています。聖母は非常に若々しく描かれ、柔らかく三つ編みに編んだ髪を右側では垂らし、左側では頭の上で結んでいます。洞窟の入口から差し込む光が、花や植物の緑を淡く照らし出しています。

コレッジョの初期の作品には、アンドレア・マンテーニャとレオナルド・ダ・ヴィンチからの影響が指摘されていますが、この作品では特に後者の影響が強く表れています。聖母マリアのサンダルはマンテーニャの影響を示唆しますが、聖母子と幼児の聖ヨハネを洞窟内に配置した点や、ピラミッド型の構図、人物の親密な表現、そしてコレッジョの多くの聖母画に見られる下向きの視線を持つ聖母の顔は、レオナルド・ダ・ヴィンチの『岩窟の聖母』の特徴と一致しています。また、聖母の髪型や身ぶりは、現存しない『レダと白鳥』に由来すると考えられています。植物やスフマートの精緻な描写も、レオナルド・ダ・ヴィンチの影響を強く受けています。

しかし、コレッジョは単にレオナルド・ダ・ヴィンチの模倣に留まらず、その手法を独自に解釈し、新たな表現を創り出した数少ない画家の一人であると指摘されています。コレッジョは、外見的な類似にとらわれることなく、暗い洞窟の設定、柔らかさ、優雅で生き生きとした人物、魅力的な感情表現といったダ・ヴィンチの要素を、一貫性のある形で融合させ、魅力的な全体像を作り上げています。

様式的な観点からは、この作品はサン・パウロ修道院のフレスコ画に近く、ミケランジェロ・アンセルミの作品の原型となったという事実から、コレッジョがこの作品をパルマで制作したことが示唆されています。

この作品の来歴をたどると、1651年にイングランド国王チャールズ1世のコレクションがロンドンで売却された際、大使アロンソ・デ・カルデナスによって購入された可能性があります。1746年には、スペイン国王フェリペ5世の王妃エリザベッタ・ファルネーゼのコレクションとして、セゴビアのラ・グランハ宮殿の目録に記録されています。エリザベッタは、パルマのファルネーゼ家の出身であったことから、彼女が結婚の際にスペインに持ち込んだとする説があります。その後、作品はアランフェス王宮を経て、1857年までにプラド美術館に収蔵されました。

現在、この作品はマドリードのプラド美術館に所蔵されており、多くの人々に鑑賞されています。

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