聖爵

正教会の聖体礼儀における聖爵（ポティール）

正教会で聖体礼儀に使用される聖爵は、金属製の杯で、イエス・キリストの聖体と尊血（パンと葡萄酒）を入れるために用いられます。西方教会の聖杯に相当するもので、ロシア語由来の「ポティール」という名称で呼ばれることが一般的です。日本語では「聖爵」とも表記されますが、「ポティール」の方が広く使われています。明治時代の文献には「聖爵（ポティール）」とルビが振られている例も見られます。

聖爵の形状と装飾

聖爵は、通常、十字架やイコンなどの宗教的な図柄が刻まれた装飾が施されています。材質は金属製で、その形状は時代や地域によって多少の違いが見られますが、基本的に杯状をしています。

聖爵の使用と取り扱い

聖爵は、神品（正教会の聖職者）以外の人間が触れることを許されていません。信徒が接吻するのは領聖時のみです。聖体礼儀では、聖体となったパンと尊血となった葡萄酒を聖爵に入れます。西方教会では、聖杯に尊血（葡萄酒）のみを入れるのに対し、正教会では聖体（パン）も一緒に聖爵に入れます。ただし、神品が最初に聖体と尊血を領聖する際には、聖体は聖爵に入れず、別途手で受け取ります。

信徒が聖体と尊血を領聖する際には、主教または司祭が聖匙（ルジーツァと呼ばれるスプーン状のさじ）を用いて聖爵から聖体と尊血を掬い、信徒の口に運びます。信徒はこれを口から受け取ります。

聖体礼儀終了後、聖体と尊血は司祭または輔祭によって全て領食（食べ尽くす）されます。聖爵に残った聖体と尊血は、熱湯で溶かし、完全に領食することが義務付けられており、一片一滴も残すことは許されません。これは、聖体と尊血を何一つ無駄にすることなく、神への敬意を表すためです。

聖体礼儀以外における聖爵

聖体礼儀で使用されない時は、聖爵は聖堂の至聖所にある奉献台の上に置かれ、「太気」と呼ばれる布で覆われて大切に保管されます。これは、聖なる器である聖爵を常に敬意を持って扱うという正教会の信仰を反映しています。

まとめ

正教会の聖爵は、単なる器ではなく、聖体と尊血を納める聖なる器として、深い信仰と敬意を持って扱われています。その形状や装飾、使用方法、そして聖体礼儀前後における取り扱いには、正教会の信仰や伝統が色濃く反映されています。聖体礼儀における聖爵の役割を理解することは、正教会の信仰をより深く理解することに繋がります。

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