領聖

領聖（りょうせい）とは

領聖とは、正教会（ギリシャ正教）において、ハリストス（キリスト）の尊体（パン）と尊血（葡萄酒）を信者が食する儀式です。これは、カトリック教会の聖体拝領や、聖公会・プロテスタントの陪餐に相当します。正教会では、相互に承認された正教会の信徒のみが領聖を許されています。

領聖の実際

領聖は通常、聖体礼儀の中で行われますが、病床にある病人へ司祭が尊体・尊血を届ける場合もあります。多くのスラヴ系の正教会では、領聖の前に痛悔機密（告解）を受けることが義務付けられていますが、ギリシャ系の正教会ではこの習慣はありません。

聖体礼儀では、尊血である葡萄酒が聖爵に入れられ、そこに尊体であるパンが浸されます。信者は、司祭が聖匙（スプーン）で取り分けた尊体・尊血をいただきます。通常、尊体だけ、または尊血だけを領聖することはありませんが、病人が固形物を嚥下できない場合は、尊血のみを領聖することもあります。

病床の病人へ御聖体を運ぶ際には、教会で予め聖変化されたパンと葡萄酒を用います。これは、聖変化したパンに聖変化した葡萄酒を染み込ませたものです。正教会では、尊体となるパンには発酵パン（プロスフォラ）が用いられ、無発酵パン（ホスチア）を用いる西方教会とは異なります。

領聖とは別に、聖体礼儀の最後には「アンティドル」と呼ばれる祝福された聖餅（パンの断片）が参祷者全員に振舞われます。これは、洗礼を受けていない人や他教派の信者もいただくことができます。

相互領聖関係

相互領聖関係とは、二つの正教会がお互いの信徒に対して、それぞれの教会での領聖を認める関係のことです。これは、二つの教会が互いに正教会の教会法上の合法性、伝統を認め、一定の交流があることを示します。

原則として、他教会の信徒が正教会で領聖することは許されません。正教会は教義の一致を重視し、教義の違いがあるままの相互領聖を認めません。そのため、各正教会の信徒のみが、他の正教会で領聖することができます。

相互領聖関係は、その教会が他の正教会から正教会として認められていることを示す重要な指標となります。近年、東方諸教会との対話が進展し、一部地域では東方諸教会の信徒の領聖を認める動きもありますが、聖霊論を異にする西方教会の信徒が正教会で領聖することはほぼ不可能です。

領聖預備規程・領聖感謝祝文

領聖に際して必ずしも必須ではありませんが、領聖に備えるための祈祷文が正教会に伝わっています。これらの祈祷文の作者は全てが明らかではありませんが、以下の聖人の作と伝えられているものがあります。

聖大ワシリイ
聖金口イオアン
シメオン・メタフラスト
ダマスコの聖イオアン
新神学者聖シメオン

関連事項

コミュニオン
聖餐論
聖体礼儀
聖体
クロンシュタットのイオアン - 領聖に関する説教が知られる正教会の聖人
教派別のキリスト教用語一覧

外部リンク

参祷の心得 - 日本ハリストス[[正教会]]
聖体礼儀と教会の一致 - カリストス・ウェア主教「領聖と相互領聖」の一部抄訳
領聖感謝祝文

もう一度検索