聶士成

聶士成（じょう しせい）：清末の激動を駆け抜けた軍人

聶士成（じょう しせい、Nie Shicheng、1836年 - 1900年）は、字を功亭といい、清朝末期の動乱期に活躍した軍人です。安徽省合肥の出身で、その生涯は太平天国の乱から義和団の乱まで、清朝を揺るがす数々の戦乱と深く関わっています。

初期の軍歴と武毅軍の創設

聶士成は、袁甲三に従い捻軍の鎮圧に貢献。自らの軍を「武毅軍」と称し、後に淮軍に編入され、その有能さから把総に任命されます。太平天国や捻軍との戦いで数々の功績を挙げ、「バトゥル」の称号を授与されました。この時期の経験が、彼の軍人としての基礎を築いたと言えるでしょう。

日清戦争と軍制改革

1884年の清仏戦争では台湾に派遣され、その後、山西太原鎮総兵に任命されます。1894年の日清戦争では、提督葉志超に従って朝鮮に赴き、牙山に駐屯。しかし、日本軍との戦いで大敗を喫します。その後、遼東の大高嶺一帯で勇戦し、その功績が認められ直隷提督に任命されました。下関条約後、清朝は陸軍の軍制改革を断行。袁世凱の新建陸軍をはじめとする北洋各防軍を統合し、武衛軍を編成しました。聶士成率いる武毅軍もこの改革に組み込まれ、武衛前軍と改称。天津近郊の蘆台に30営を駐屯させ、ドイツ式の軍事教練を実施しました。

義和団の乱と悲劇的な最期

1900年、義和団の乱が発生すると、聶士成は当初からその鎮圧を主張しました。義和団が保定鉄道を破壊した際には、京津鉄道の保護を命じられます。廊坊で義和団が鉄道の破壊を始めると、武衛前軍が出動。義和団から襲撃を受けた聶士成軍は反撃し、多数の義和団を殺害しました。しかし、当時の政権を掌握していた端郡王載漪や大学士剛毅らは、聶士成を激しく叱責。直隷総督裕禄は、武衛前軍を天津に撤退させざるを得ませんでした。天津には2万人の義和団がいましたが、武衛軍への襲撃を繰り返しました。聶士成はあえて抵抗しませんでしたが、武衛前軍と義和団との間の確執は深まっていきました。

6月には、武衛前軍は天津の楊村一帯で義和団とともに、北京公使館の救出に向かった8ヶ国連合軍の先遣隊と戦闘を開始。この戦闘で義和団は連合軍と武衛前軍の機銃掃射を受け、大きな損害を出しました。しかし、京津鉄道が義和団によって破壊されていたことと、聶士成軍の装備が優れていたことから、8ヶ国連合軍の先遣隊は撤退を余儀なくされました。清朝はこの廊坊の戦いを大勝と発表しましたが、裕禄はこの功績を義和団に帰し、聶士成への褒美はありませんでした。

6月下旬から、聶士成は十数度にわたり天津租界を攻撃。しかし、その隙に乗じて義和団は略奪を繰り返したため、聶士成は兵を派遣して千人以上の義和団を殺害しました。このため、義和団は聶士成が外国に通じていると非難し、朝廷も聶士成を譴責しました。そして7月9日、聶士成は天津での連合軍との交戦中に戦死。朝廷は弔慰金を贈ろうとしましたが、載漪や剛毅によって阻まれました。

聶士成の死後、その功績が再評価されるまでには時間を要しました。1905年になってようやく天津に記念碑が建立され、忠節の諡号が贈られました。聶士成の生涯は、清朝末期の混乱と矛盾を象徴しており、その悲劇的な最期は、歴史の教訓として語り継がれています。

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