天津租界

天津租界：多文化が交錯した租借地の歴史

天津租界は、1860年から1947年にかけて、イギリス、フランス、ドイツ、日本、アメリカ、イタリア、ロシア、オーストリア＝ハンガリー、ベルギーといった国々が、中国の天津に設定した租借地です。これらの国々は、不平等条約や協定を通じて、天津の旧市街南東部に、行政自治権と治外法権を確立しました。

概要

最初に租界を設置したのはイギリスで、1860年のことでした。その後、1896年には日清戦争を経て日本租界が設立されました。最盛期には9ヶ国が天津に租界を構え、第二次世界大戦中も日本やイタリアによって管理されていました。

1945年8月、第二次世界大戦で中華民国が勝利すると、1947年には天津に残っていた最後の租界が返還され、天津租界の歴史は幕を閉じました。しかし、租界時代の西洋文化と中国の伝統、地域文化が融合した独特の文化は、天津の多元的な文化の重要な一部として、今も息づいています。現在でも、旧市街には各国の建築様式が残っており、当時の面影を偲ぶことができます。

沿革

1860年：アロー戦争後の北京条約により天津が開港。イギリスに続き、フランスが租界を設置。
1895年：ドイツ租界が成立。
1896年：日清戦争後、日本租界が設置。
1900年：義和団の乱で、清が八カ国列強に宣戦布告。天津攻略戦で清国軍が敗北し、ロシア租界が成立。
1901年：イタリア租界を設置。
1902年：ベルギー租界、オーストリア＝ハンガリー租界を設置。アメリカ租界はイギリス租界へ併合。
1919年：第一次世界大戦で敗戦したドイツ、オーストリア＝ハンガリーの租界が返還。
1920年：ロシア内戦の混乱に乗じて、北京政府がロシアから土地と租界を奪取。1924年にはソビエト連邦が租界の請求権を放棄。
1931年：ベルギー租界が返還。
1938年：日本軍がイギリス、フランス租界内の共産主義勢力一掃のため、租界出入口で検問を実施。
1939年：天津事件発生。
1942年：第二次世界大戦でイタリア極東艦隊が日本海軍と共同作戦を展開。
1943年：中英条約により、イギリス租界が返還。
1945年：日本租界が返還。
1946年：フランス租界が返還。
1947年：イタリアとの平和条約により、イタリア租界が中華民国へ返還。

麻薬密売

関東庁事務官であった藤原鉄太郎の報告書によれば、天津における阿片などの麻薬取り締まりは杜撰であり、密輸入が横行していました。天津在住の日本人5千人の7割が、モルヒネなどの禁制品取引に関与し、日本人居留民の繁栄はモルヒネ取引の結果であると指摘されています。日本の天津領事館は、阿片が蔓延している状況を黙認し、1934年には居留民団が財源確保のため、税金を払えば阿片吸引を黙認する「煙館制度」を実施しました。しかし、この制度は中国側から麻薬取引を公認したものと見なされ、多くの問題を引き起こしました。

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