肝属地方風水害

肝属地方風水害について

昭和13年（1938[[年]]）10月、鹿児島県に甚大な被害をもたらした肝属地方風水害は、台風による集中豪雨が原因で発生しました。この災害は、主に肝属半島（大隅半島）を流れる肝属川流域で発生し、「肝属水害」や「肝属川水害」とも呼ばれています。

災害の経過

1938[[年]]10月8日、フィリピン東方で発生した台風は、14日午後6時に屋久島西方海域を通過し、15日午前2時頃には屋久島に中心が到達しました。その後、台風は種子島東岸を通過し、16日には八丈島の西方で消滅しました。

屋久島雨量観測所によると、15日午前2時に最低気圧973.52hPaを記録し、午前3時には最大風速33m/sを観測しました。

被害状況

台風が屋久島や種子島を通過した10月14日から15日にかけて、時速10〜15kmというゆっくりとした速度で移動したため、大隅半島南部では24時間雨量が400mmを超えるという記録的な豪雨となりました。鹿屋観測所では1日雨量が389mm、高山観測所では400mmを記録し、肝属川水系では10箇所もの堤防が決壊しました。

特に被害が大きかったのは、高山町、姶良村、内之浦町で、鹿児島大学によると死者310名、行方不明者125名、重傷者629名という甚大な人的被害が発生しました。また、家屋の流出・全壊は1,969棟、半壊は1,397棟、浸水家屋は10,568棟にのぼるとされています。国土交通省の調査では、死者304名、行方不明者131名、負傷者628名、流出・半壊家屋1,532戸、浸水家屋5,067戸と報告されており、被害総額は約3,600万円にのぼりました。

錦江町の田代小学校では、裏山の土砂崩れで木造校舎が破壊され、2名の教職員が犠牲になりました。鹿屋市吾平町では、浸水した地域から遺体が発見され、救難本部で収容されました。

肝付町高山地区の被害

中でも最も犠牲者が多かったのは肝付町高山地区です。鹿児島大学名誉教授の岩松暉氏によると、高山地区では山が崩れて土石流が発生し、下流に押し寄せたことで増水・氾濫を引き起こしたとされています。高山地区では、10月14日から15日にかけて総雨量420mmを記録し、その結果、山津波が発生。死者118名、行方不明者53名、重傷者253名という甚大な被害が出ました。住民は、大水害が潮のように押し寄せてきたため、避難することもできず、浸水した家屋から屋根の上に避難しましたが、そのまま下流に押し流された人もいました。

この惨状を後世に伝えるため、「被害を伝える石碑」や「高山川水害史碑」が建設されました。

復興活動

10月15日朝、県庁に被害情報が伝わりましたが、当初は詳細が不明でした。しかし、前代未聞の災害であることから、県庁に救援救護本部が、鹿屋町に出先本部が設置されました。県立鹿児島病院や県医師会が中心となり、救療隊が結成され、海上班は警察船で、陸上班は鹿屋へ派遣されました。事態の深刻さをうけ、20日には鹿児島の歩兵第45連隊、21日には熊本工兵隊が出動し、救助活動を行いました。

復旧・復興のための財源は、国庫補助、県の復旧復興事業費、全国からの義援金で賄われました。

水害が発生する前年の昭和12年から国による河川改修が開始されていましたが、水害後に本格化されました。河川改修では、蛇行していた肝属川を直線化し、堤防を建設するなどの対策が実施されました。大隅河川国道事務所は、同規模の豪雨が発生しても氾濫には至らないと分析していますが、2018年の台風24号では支流が一時的に氾濫危険水位を上回るなど、想定を超える事態も起こりうるとしています。

参考資料

鹿児島県 (1940-01). 昭和十三年肝屬地方風水害誌. NCID BN14455751
ウィキメディア・コモンズには、肝属地方風水害に関するカテゴリがあります。

もう一度検索