肝属川

肝属川（きもつきがわ）

鹿児島県南東部、大隅半島の中央部を流れ、志布志湾へと注ぐ一級河川。上流部では鹿屋川とも呼ばれています。川の名前は、かつてこの地域に存在した肝属郡に由来します。

地理

大隅半島西部の高隈山地に源を発し、笠野原西部を南へと流れます。旧吾平町北部で姶良川と合流するとともに東へと流れを変え、肝属平野の南部を蛇行しながら志布志湾へと注ぎます。流域には広範囲にわたってシラス台地が分布しているのが特徴です。

歴史

肝属川の歴史は、約200万年前に高隈山地が形成されたのと同時に始まったと考えられています。当初は源流から東に流れていましたが、約2万5千年前に発生した入戸火砕流によって笠野原台地が形成されたことで、現在の鹿屋市吾平町方面へと南下するようになりました。その後、海面が低下するにつれて河口は東へと移動し、同時に沖積平野も形成されていきました。

弥生時代には王子遺跡のような集落が、古墳時代には唐仁古墳群や塚崎古墳群といった大規模な古墳群が築かれました。江戸時代には河口域の柏原や波見が貿易港として栄え、地域の経済を支えていました。

明治時代以前の下流部は、蛇行が激しく堤防もほとんどない原始河川に近い状態でした。そのため、大雨のたびに氾濫原全体が水没する状況が頻繁に発生していました。1914年の桜島大正大噴火で大量の火山灰が堆積し、河床が上昇したことで危険な状態となったため、1915年から住民による改修工事が始まりましたが、水害を抑えることはできず、堤防の建設と流失が繰り返されました。

1918年からは県が、1937年からは国が主体となって本格的な改修工事が始まりました。しかし、1938年10月15日には台風による大水害（肝属地方風水害）が発生し、278名が死亡、177名が行方不明となる大惨事となりました。この災害を機に、改修計画は大幅に変更され、蛇行の直線化が進められることになりました。長期にわたる工事の結果、1963年にほぼ完成し、1967年には一級河川に指定されました。さらに、1996年には鹿屋市内のシラス台地を貫く鹿屋分水路も完成しました。度重なる改修工事によって直線化が進められたものの、市や町の境界、自然堤防沿いの集落の分布には、往時の川の面影を見ることができます。

2020年7月の豪雨では、鹿屋市祓川町の大園橋に流木などが引っかかり、川の周辺で床上浸水が発生しました。大園橋は1904年建造の石造二重アーチ橋で、鹿屋市の有形文化財に指定されていますが、今後の河川氾濫の可能性を考慮して文化財指定の解除と撤去が検討されています。

環境

肝属川は、水質の指標となるBOD値が高く、九州の一級河川の中では最下位になることもあります。そのため、「汚い川」として認識されることもあります。汚染の原因としては、畜産関連の排水や下水道の未整備などが挙げられています。

流域の自治体

鹿児島県
鹿屋市
肝属郡肝付町
東串良町

支流

肝属川には35本の支流があります。主な支流は以下の通りです。

姶良川：鹿屋市
串良川：垂水市、鹿屋市、東串良町

並行する交通

鹿屋市の北田交差点以北は国道504号がほぼ並行しています。
1987年3月14日までは、鹿屋市街以東を国鉄大隅線が並行していました。

流域の観光地

鹿屋航空基地資料館
鉄道記念館（旧大隅線鹿屋駅跡）

主な橋梁

（上流より）

吉ヶ別府橋
仮谷橋
吉留橋 - 国道504号
福留橋
留口橋
大久保橋
しもくるす橋
馬渡橋
東田橋 - 県道550号 鹿屋環状線
大園橋 - 県道550号 鹿屋環状線
（長谷堰）
外園橋
（第一郷田堰）
祓川橋 - 県道550号 鹿屋環状線
（第二郷田堰）
中原下橋
井之上橋
鹿屋大橋 - 国道220号 鹿屋バイパス
樋渡橋 - 国道504号
(新和田井堰)
王子橋
山中橋
安住寺橋
見取橋
柳橋
ふれあい橋２号橋
ふれあい橋１号橋
鹿屋橋 - 国道269号
新町橋
平和橋
朝日橋
昭栄橋
栄橋
古城橋
狩長橋
沢尻橋
新川田崎大橋
役所の下橋 - 県道550号 鹿屋環状線
大正橋
河原田橋
黒込橋
流合橋
宮下橋 - 県道544号 折生野神野吾平線
永田橋
高良橋 - 県道73号 鹿屋高山串良線
池之園橋
俣瀬橋 - 県道520号 永吉高山線
第二有明橋

参考文献

国土庁土地局国土調査課編 『肝属川地域主要水系調査書（肝属川、その他）』 国土庁、1985年。
栄喜久元 『かごしま文庫15 かごしま・川紀行』 春苑堂出版、1994年、ISBN 4-915093-21-2。
国土交通省九州地方整備局 大隅河川国道事務所編『肝属川と仲間たち』 1999年。

関連項目

鹿屋市

外部リンク

* 国土交通省九州地方整備局 大隅河川国道事務所

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