背側皮質視覚路

背側皮質視覚路の概要

背側皮質視覚路、または背側視覚路は、霊長類の大脳に存在する視覚経路の一つで、その位置は大脳の背側（上側）にあります。この経路は、視覚対象が空間にどのように配置されているかを理解するのに重要であり、そのため「where経路」と呼ばれることもあります。この背側視覚路は、腹側皮質視覚路（「what経路」と称される）と共に、皮質内の主要な視覚経路として機能しています。

背側視覚路の構造とプロセス

背側視覚路は、後頭葉の最も後ろに位置する一次視覚野（V1）から始まり、段階的に頭頂葉に向かって進みます。具体的には、まずV1からV2、V3を経て、側頭葉内側と頭頂葉の境界に位置するMT野（V5野）やMST野（内側上側頭野）を通過し、最終的に頭頂葉のIP野（VIPやLIPに分類される）および7a野に至ります。これらの領域は、頭頂連合野の一部として相互に関連して機能しています。特に、LIPや7a野は、それぞれ異なる空間認識の役割を持ち、視覚情報と身体の動きとの関連を理解するのに寄与します。

一方で、背側視覚路と腹側視覚路は神経細胞のネットワークを通じて連絡していて、双方の経路がどれほど独立して機能しているか、またその意義については神経科学の分野でも意見が分かれるところです。

背側視覚路の機能

背側視覚路の持つ主な機能には、空間の認識と、物体へ手を伸ばす動作の指標となる点があります。この経路は、視野全体についての詳細な地図を作成し、動きの把握と分析に優れています。後頭葉の一次視覚野では基本的な視覚機能が発揮されますが、頭頂葉に向かう過程でその機能は空間認識へと変化していきます。後部頭頂葉は、立体的な関係を理解し、身体のイメージや空間での位置を調整する上で不可欠な役割を果たしています。

この領域内には、特定の刺激に対する注意が向けられる際に活性化が高まるLIPや、視覚情報と体性感覚情報を統合するVIPといった特殊な機能を持つ領域も存在します。

障害の影響

背側視覚路に関連する脳の損傷や疾患は様々な空間認識の問題を引き起こす可能性があります。具体的には、以下のような障害が見られます。

• - 視覚性同時失認: 同時に複数の対象に注意を向けることが困難で、全体像を理解できず、細部しか把握できない状態。
• - 視覚性運動失調: 手を動かす際に視覚情報をうまく活用できず、視覚対象に手を伸ばそうとしても正確にアプローチできない。
• - 半側空間無視: 身体の健側（傷害とは逆側）の空間を認識できない事態。
• - 視覚性運動盲: 動いている対象が静止して見え、動きが把握できない状態。
• - 失行: 筋力には問題がないのに、任意の運動を行えない。

これらの障害は、脳内での空間情報の処理の質やパターンに大きく依存しています。情報の流れが損なわれることにより、日常生活にも多大な影響を及ぼす可能性があります。

参考文献

この分野の初期の研究として、グッデールとミルナーによる重要な概説があります。また、以下の文献も参考にされています：

• - Michael S. Gazzaniga et al., Cognitive Neuroscience, 2nd ed.
• - 田崎義昭他著、『ベッドサイドの神経の診かた』改訂16版

まとめ

背側皮質視覚路は、視空間の認識や行動に必要な情報処理に深く関与しており、その理解は神経科学や認知心理学において重要なテーマです。この経路の機能障害は、具体的な認知的影響を持つため、研究が進められるべき重要な領域です。

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