胞子体

胞子体とは

胞子体（Sporophyte）は、植物、藻類、菌類など、世代交代を行う生物において、複相（二倍体）の染色体を持つ世代、またはその多細胞体を指します。これは、相同染色体を2組持つ状態であり、対義語として単相（半数体）の染色体を持つ配偶体が存在します。

生活環における位置づけ

胞子体は、生活環の中で重要な役割を果たしています。まず、胞子体は減数分裂を行い、単相（半数体）の胞子を生成します。この胞子が細胞分裂を繰り返すことで配偶体が形成されます。配偶体はさらに配偶子（精子と卵子）を作り、雌雄の配偶子が融合することで複相の接合子となります。この接合子が細胞分裂を繰り返すことで、多細胞の胞子体が再び形成されます。このサイクルが、世代交代と呼ばれる現象です。

性別の概念

本来、性別は異形配偶子（精子と卵子）を形成することに関連しており、配偶体を特徴づけるものです。したがって、胞子を作る胞子体には、基本的に性別は存在しません。このため、世代交代において胞子体を無性世代と呼ぶこともあります。

しかし、例外も存在します。シダ植物の一部（特に水生シダ類）では、大胞子と小胞子という2種類の胞子を形成します。大胞子からは雌性の配偶子が、小胞子からは雄性の配偶子がそれぞれ生じます。つまり、胞子の段階で雌雄の区別が存在することになります。現生のシダ類では、これらの胞子は同一個体上に形成されますが、もし別個体上に生じた場合、それらをそれぞれ雌株、雄株と呼ぶことも可能です。この例に見られるように、一部の胞子体には性別を判別できる場合があります。種子植物における雌雄異株の概念は、この考えに基づいています。

具体例

• - 種子植物：肉眼で見ることのできる植物体（栄養体）は、胞子体です。配偶体は、胚珠内の胚嚢や花粉として存在し、顕微鏡レベルの大きさに退化し、胞子体に寄生しています。
• - シダ植物：植物体としては胞子体が一般的で、配偶体（前葉体）は小さく目立ちません。多くのシダ植物では、雌雄の区別がない同型胞子を作りますが、イワヒバ科や水生シダの一部では異型胞子（雌雄の区別がある胞子）を形成し、それぞれから卵子と精子の一方だけを作る前葉体が生じます。
• - コケ植物：配偶体が栄養体であり、その上に形成される柄のついた胞子嚢（一般に「苔の花」と呼ばれる）が胞子体です。この胞子体は配偶体に寄生し、胞子を作る役割を果たします。
• - 多細胞藻類：緑藻、褐藻、紅藻などでは、多くの場合、胞子体の方が大型になりますが、ほぼ同じ大きさになるものも存在します。

大きさの違い

一般的に、胞子体は配偶体よりも大きいことが多いですが、これは絶対的なルールではありません。例えば、コケ植物のように胞子体が明らかに小さい例もあります。シダ植物とコケ植物は、系統的に近いか共通の祖先を持つと考えられており、それぞれ配偶体と胞子体のどちらかが発達しています。シダ植物はコケ植物よりも大きく複雑な構造を持つため、複相である状態が栄養体の大型化や複雑化に寄与しているという議論もあります。

関連項目

• - 世代交代
• - 配偶体
• - 栄養体
• - 胞子

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