胸骨舌骨筋

胸骨舌骨筋 (sternohyoid muscle) について

胸骨舌骨筋は、頚部前方に位置する筋肉であり、舌骨を下方に引く作用を持っています。この筋肉は、発声や嚥下といった機能において重要な役割を果たします。以下に、その詳細について解説します。

起始

胸骨舌骨筋は、以下の部位から起始します。

胸骨柄: 胸骨の最上部に位置する部分。
胸鎖関節: 胸骨と鎖骨が連結する関節。
第一肋軟骨後面: 第一肋骨の軟骨部分の裏側。

これらの起始部から、筋肉は上方に向かって走行します。

停止

胸骨舌骨筋は、舌骨体下縁に停止します。舌骨は、顎の下、喉仏のやや上に位置するU字型の骨であり、筋肉や靭帯によって宙吊りになっています。胸骨舌骨筋が収縮することで、舌骨が下方に引かれます。

作用

胸骨舌骨筋の主な作用は、舌骨を下方に引くことです。これにより、以下のような機能に貢献します。

嚥下: 食べ物や液体を飲み込む際に、舌骨の位置を調節し、スムーズな嚥下を助けます。
発声: 声を出す際に、喉頭の位置を安定させ、声の質を調節します。

神経支配

胸骨舌骨筋は、頚神経から分岐する頚神経ワナという神経によって支配されています。頚神経ワナは、複数の頚神経が合流して形成される神経叢であり、頚部の筋肉の運動を制御しています。

解剖学的関係

胸骨舌骨筋は、頚部の他の筋肉と密接な関係にあります。例えば、同じ舌骨下筋群に属する甲状舌骨筋や肩甲舌骨筋などと共に、舌骨の位置を調節する役割を果たします。また、胸骨甲状筋は胸骨舌骨筋の深層に位置し、甲状軟骨を下方に引く作用を持っています。

臨床的意義

胸骨舌骨筋の機能不全は、嚥下障害や発声障害を引き起こす可能性があります。また、頚部の手術や外傷によって、胸骨舌骨筋が損傷を受けることもあります。そのため、頚部の診察や治療においては、胸骨舌骨筋の状態を評価することが重要です。

まとめ

胸骨舌骨筋は、舌骨を下方に引く作用を持つ頚部の筋肉であり、嚥下や発声といった重要な機能に関与しています。その解剖学的構造や機能、臨床的意義を理解することは、医療従事者にとって不可欠です。

参考文献

解剖学教科書

関連項目

首
解剖学
口腔解剖学
人間の筋肉の一覧

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