能勢電鉄妙見の森ケーブル

妙見の森ケーブル：歴史と終焉を辿る標準軌ケーブルカー

兵庫県川西市に位置する妙見山へのアクセスルートとして親しまれてきた妙見の森ケーブルは、能勢電鉄によって運営されていたケーブルカー路線です。2023年12月3日をもって営業を終了し、歴史に幕を閉じました。本稿では、その歴史、特徴、そして廃止に至るまでの経緯を詳細に解説します。

標準軌という個性

日本のケーブルカー路線においては、1067mm軌間が一般的です。しかし、妙見の森ケーブルは、それらとは異なる1435mmの標準軌を採用していました。これは珍しい特徴であり、その技術的な背景や理由を探ることは、鉄道史研究においても興味深い点と言えるでしょう。

愛称を持つ車両と運行形態

廃止時まで運行されていた車両は、ナニワ工機（現アルナ車両）によって製造されたもので、1960年の路線再開業時から活躍していました。1号車「ほほえみ」、2号車「ときめき」という愛称が付けられており、乗客に親しみを持たれる存在でした。

運行形態は通常20分間隔でしたが、多客期には10分間隔に短縮されることもありました。乗車時間は約5分。冬期（12月初旬～3月中旬）は、長らく平日のみ運休でしたが、2006年からは土日祝日を含めて全面運休となりました。ただし、正月三が日や能勢妙見堂の行事開催日、特定のイベント開催時には臨時運行が行われていました。近年では、水曜と木曜が定休日となっていました。

妙見の森ケーブルの歴史：開業から廃止まで

妙見の森ケーブルの歴史は古く、その起源は1919年にさかのぼります。地元有志による妙見鋼索鉄道の申請を皮切りに、能勢電気軌道（現在の能勢電鉄）との合意を経て、1925年に開業しました。当初は滝谷駅と妙見山駅を結ぶ上下2線で構成されており、年間37万人の利用客を記録するなど盛況を極めました。しかし、戦争によって不要不急線とみなされ、全線が撤去されるという憂き目に遭っています。

戦後、能勢電鉄によって下部線（現在の妙見の森ケーブル）が復活しました。上部線は妙見の森リフトに置き換えられました。最盛期には年間20万人近い利用客があったものの、その後は阪急バスの直通路線や参拝客減少の影響を受け、利用客数は減少の一途を辿りました。

2023年6月、老朽化による大規模な更新投資が必要となる一方で、経営環境の悪化から今後の継続が困難と判断。能勢電鉄は妙見の森リフト、バーベキュー施設等を含む関連事業の営業終了を発表しました。同年12月4日、ついにその歴史に幕を閉じました。

接続路線とアクセス

妙見の森ケーブルの黒川駅は、能勢電鉄妙見線妙見口駅から徒歩、または阪急バスでアクセスできました。また、ケーブル山上駅からは妙見の森リフトに乗り継ぐことができました。バス路線は、能勢町地域公共交通会議による議論を経て、2024年春に路線廃止が決まっており、町民向け乗合タクシーへの移行が予定されています。

廃止後の状況

廃止後、ケーブルカーの車両や設備は、一部が他社に譲渡される予定です。ケーブル山上駅は、兵庫県内で最東端の駅として知られていましたが、廃止後は阪急神戸本線園田駅がその座を引き継ぎました。

まとめ

妙見の森ケーブルは、標準軌という珍しい特徴を持つケーブルカーとして、多くの観光客に親しまれてきました。しかし、時代の変化や経営環境の悪化により、その歴史に終止符が打たれました。その存在は、地域の交通史、そして人々の記憶に刻まれたまま、未来へと語り継がれていくでしょう。

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