能登川昭和映画劇場

能登川昭和映画劇場：能登川の記憶を彩った映画館

能登川昭和映画劇場は、かつて滋賀県神崎郡能登川町（現在の東近江市能登川地区）に存在した映画館です。その歴史は昭和初期に遡り、地域の娯楽を担う重要な存在でした。

誕生と変遷：多目的娯楽施設から映画館へ

正確な時期は不明ながら、1930年代には能登川駅前に「湖東館」として開館しました。当初は映画だけでなく、様々な娯楽を提供する多目的施設でした。しかし、第二次世界大戦が激化すると、建物は工場へと転用され、一時その姿を消します。

戦後、1947年（昭和22年）に地元の有志によって映画館として復興し、「能登川劇場」と改称。地域の文化的な拠点として再出発しました。1953年（昭和28年）には、八日市市の協楽興業に経営権が移り、「能登川昭和映画劇場」と名称を新たにします。

映画の灯が消えるまで

1968年（昭和43年）前後には映画の常設上映を終了し、事実上の休館状態となりました。しかし、建物自体は1991年（平成3年）まで存続し、能登川の歴史における最初で最後の映画館として、その名を刻みました。劇場は「能登川昭映」または「昭映」という愛称で親しまれ、地元の人々に親しまれました。

映画館を彩った人々

能登川昭和映画劇場は、多くの人々に支えられていました。経営者としては、能登川興業や協楽興業が運営に携わり、寺井一雄、堀井昭秀、堀井寅蔵、辻寅蔵といった人々が支配人として劇場を切り盛りしました。彼らの尽力によって、映画館は地域に根ざした存在として発展していきました。

能登川昭和映画劇場の記憶

能登川昭和映画劇場は、単なる映画館というだけでなく、地域の文化や人々の記憶と深く結びついています。イラストレーター・グラフィックデザイナーの黒田征太郎は、幼少期にこの映画館で映画を鑑賞した思い出を語っています。特に、美空ひばり主演の『東京キッド』を鑑賞したことは、彼の記憶に強く残っているようです。映画館は、少年時代の黒田にとって、映画上映と駅前の書店での少年雑誌が心の支えだったと回想しています。

閉館後：駐車場となった跡地

能登川昭和映画劇場の跡地は、現在駐車場となっています。しかし、その場所は、かつて映画の灯が輝き、人々の笑顔と感動に満ち溢れていた場所です。能登川を訪れる際には、かつてそこに映画館があったことを思い出し、地域の歴史と文化に触れてみてはいかがでしょうか。

データ

所在地：滋賀県神崎郡能登川町大字垣見26番地（現在の東近江市垣見町26番地）
構造：木造二階建
* 観客定員数：400名（1955年 - 1961年）⇒ 300名（1967年）

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