能登志雄

能登志雄の生涯と業績

能登志雄（のう としお、1912年5月 - 1988年2月6日）は、日本を代表する地理学者として、地域の集落地理学や人文地理学の分野で数多くの功績を残しました。彼は長崎県長崎市で生まれた後、父親の仕事の関係で石川県金沢市に移り住みます。地元の教育機関で学びながら、自然科学に興味を持ち続けました。

彼は1932年に東京帝国大学理学部地理学科に入学し、辻村太郎教授のもとで人文地理学の研究に専念します。大学時代には木内信蔵らと共に学び、語学にも秀でていたため、英語やドイツ語に通じていました。卒業後の1935年には大学院に進学し、辻村教授と共にノルベルト・クレープスの『人類地理学』を訳し、地理学に関する深い理解を示します。

しかし、1940年代初頭の日本では戦局が厳しく、能は広島陸軍幼年学校の教官や陸軍気象部付の技師としての職務に従事しました。彼は南方派遣野戦気象部隊の予報技術将校としても活動しており、その間にフェルディナント・フォン・リヒトホーフェンの著作を翻訳するなど、地理学分野の発展に寄与し続けます。

戦後、捕虜としての経験を経て復員した後、連合国軍最高司令官総司令部（GHQ）に勤務します。その後、紅陵大学（現在の拓殖大学）や東京女子高等師範学校で教授職に就きます。1948年には教授に昇進し、1950年からはお茶の水女子大学助教授も兼任しました。

1952年には「聚落形態の地理学的研究」において理学博士の学位を取得し、これを基に『聚落の地理 景観論的方法による聚落地理の研究』を出版します。この著作により、彼は地理学における景観論の継承者として評価されることになります。

彼のキャリアの中で、1959年にはお茶の水女子大学と東北大学の教授職を兼任し、1960年代から70年代にかけては東北大学において地理学教室を主宰。その後、1984年に名誉教授の称号を授与され、勲二等瑞宝章を受章後、1988年には正四位に叙されるまで、長きにわたり日本の地理学界に貢献し続けました。

主な著書

能登志雄は、数多くの著作を残しており、主な単著には以下のような作品があります。

• - 『タイ国地誌』（1941年、古今書院）
• - 『現代の地誌学』（1949年、古今書院）
• - 『聚落の地理』（1952年、古今書院）
• - 『気候順応』（1966年、古今書院）
• - 『湿潤熱帯』（1970年、朝倉書店）

また、共著としては、1983年にJohn C. Kimuraとの共著で『Japan: a regional geography of an island nation』（帝国書院）があり、翻訳書も数点存在します。彼の業績は高く評価されており、地理学の発展に寄与した功績は後の研究者たちにも影響を与えています。

能登志雄の人生は、戦乱の中で多くの経験を積み重ね、地理学分野で数々の成果を上げた軌跡が示されています。彼の業績は今なお地理学の重要な基盤として受け継がれており、彼が残した著作は今でも多くの研究者や学生に読まれています。

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