脊椎側彎症

脊椎側彎症：背骨の湾曲と健康への影響

はじめに

脊椎側彎症は、背骨（脊椎）が側面から見て自然なカーブではなく、横に曲がってしまう病気です。正面や後ろから見るとまっすぐな背骨が、横方向に湾曲したり、ねじれたりする状態を指します。痛みを伴わないケースも多く、初期症状に気づきにくいのが特徴です。

側彎症の種類

側彎症は、湾曲の形状や原因によっていくつかの種類に分類されます。主なものとしては、横に曲がる側彎、後ろに反る後彎、そして側彎と後彎が両方見られる後側彎症があります。中でも、横にねじれながら湾曲する側彎症が最も一般的です。

側彎症の原因

側彎症の原因は多岐に渡り、大きく分けて以下の種類があります。

1. 特発性側彎症

原因不明の側彎症で、全体の80～85％を占めます。発症時期によって、乳幼児期、学童期、思春期に分類され、思春期（10歳以降）に発症するケースが最も多く、特に思春期前の女子に多く見られます。成長期に進行する傾向があり、成長が止まるまで経過を観察する必要があります。

2. 先天性側彎症

先天的な脊椎の異常や発育段階での異常によって引き起こされます。胸郭不全症候群などが関連するケースもあります。

3. 神経原性側彎症

脳や脊髄の異常が原因で発症します。

4. 筋原性側彎症

筋肉の異常によって姿勢を保てなくなることが原因です。

5. 間葉性側彎症

マルファン症候群やエーラス・ダンロス症候群などの遺伝性疾患に関連して発症します。

6. 神経線維腫症I型

神経線維腫症I型に関連して発症します。

7. 外傷性側彎症

外傷が原因で発症します。

8. 位置的頭蓋変形症

乳幼児の頭の形がゆがむ位置的頭蓋変形症、特に頭位性斜頭症に伴って発症することがあります。

健康への影響

側彎症は、単に背骨が曲がるだけでなく、椎体（背骨の骨）自体がねじれながら湾曲するため、肋骨にも影響が出ることがあります。具体的には、凸側の肋骨が後方に張り出すことで、容姿に影響が出ることがあります。女性の場合、乳房の左右差や背中の出っ張りなどが現れる可能性があります。

また、内臓への影響も懸念されます。胸部の圧迫によって呼吸器や循環器に障害が起こる可能性があり、進行すると肺や心臓の機能不全につながる可能性もあります。さらに、腰椎への負担が増加し、腰痛の原因となることもあります。

検査と治療

側彎症の早期発見には、レントゲン撮影による彎曲の角度（コブ角）の測定が重要です。コブ角の大きさによって、軽度、中等度、高度に分類され、治療法が異なります。

軽度側彎症

通常は経過観察を行います。

中等度側彎症

コルセットなどの装具による治療が行われます。装具は側彎の進行を遅らせる効果がありますが、完全に治癒させるものではありません。

高度側彎症

手術が必要となる場合があります。手術では、スクリューやロッドを挿入して脊柱を矯正しますが、これも完全な治癒を保証するものではありません。様々な手術法があり、医師と相談の上、適切な方法を選択する必要があります。

その他

近年では、骨盤周辺の筋肉強化やカイロプラクティックケアなども、側彎症の治療や症状軽減に役立つと考えられています。しかし、運動療法や民間療法の効果については、科学的な裏付けが十分でない場合もあります。治療は医師とよく相談し、適切な方法を選択することが大切です。

著名な患者

歴史上の人物や著名人にも側彎症の患者がいました。例えば、イングランド王リチャード3世や、陸上競技選手のウサイン・ボルト、ユージェニー・オブ・ヨーク王女などが挙げられます。

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