脱亜思想

脱亜思想とは

脱亜思想とは、アジアから脱却しようとする思想のことです。福澤諭吉の『学問のすゝめ』や『文明論之概略』などが代表的な著作として知られています。

国語国字論争と脱亜思想

明治時代、中華文明から脱却し西洋文明を取り入れるため、漢字廃止論を含む国語国字論争が起こりました。前島密は平仮名のみの表記を、西周はローマ字による表記を、森有礼は国語の英語化を主張しました。これらの議論は、西洋化を推し進める脱亜思想の一環と捉えることができます。

福澤諭吉と脱亜思想

福澤諭吉は『福翁百話』の中で、以下のように脱亜思想について述べています。

今支那、朝鮮と近接するの法なし。

此二国の人々は、世の文明を知らず。

支那人は卑屈にして恥を知らず。

朝鮮人は無能にして事を知らず。

此二国は、日本の進歩を妨ぐるものなり。

故に、此二国とは交際を絶ち、西洋諸国と親交を結ぶべきなり。

この言葉は、当時の日本がアジアの国々から距離を置き、西洋諸国との連携を重視すべきであるという考えを示しています。

脱亜思想と脱亜論

「脱亜思想」と「脱亜論」は混同されがちですが、「脱亜思想」は一般的な思想の名前であり、「脱亜論」は新聞『時事新報』の社説の名前です。平山洋は、福澤諭吉を擁護する点から両者を区別して扱う必要があると主張しています。

脱亜思想の現代的意義

的場昭弘は、福澤諭吉について「アジア人に文明を学び西欧人に抗する気概を持ってほしいと願う点で、たんなるアジア蔑視論者ではない」としつつ「日本人のアジア蔑視論の淵源に属するといってよい」と指摘しています。また、脱亜入欧については、アジアの隆盛の昨今では西欧からもアジアからも孤立し、衰退し続けることになったことは「容易には理解しがたい謎の行動」としています。

脱亜思想は、日本の近代化に大きな影響を与えた一方で、アジア蔑視の思想的根源となった側面も否定できません。現代においては、グローバル化が進む中で、アジアの一員としての日本の立ち位置を再考する上で重要なテーマと言えるでしょう。

参考文献

丸山眞男「福沢諭吉の儒教批判」松沢弘陽編『福沢諭吉の哲学 他六篇』岩波書店、2001年

関連項目

脱亜論
儒教
中華思想
福澤諭吉
学問のすゝめ
* 文明論之概略

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